③ 統括管理業務の内容

「(建築設備管理)統括管理業務」は下記のようになります。

1.法定技術責任者の選・解任

管理建築物の維持管理において、関係官庁に届け出等を必要とする法定技術責任者(下記例)を、当該管理担当構成員の中から選任する。
(退職・異動等により不在となった場合は、解任手続き、後任者の選任を行う)
尚、選解任届け出は、ビル所有者の名義で行うケースが多い。

  1. 電気主任技術者(所轄経済産業局宛、選・解任届、保安規程等)
  2. ボイラー取扱作業主任者(事業所内選任)
  3. 冷凍保安責任者(都道府県知事宛、冷凍保安責任者届)
  4. 建築物環境衛生管理技術者(所轄保健所経由都道府県知事宛、特定建築物変更届)
  5. 危険物保安監督者の選任及び届出(所轄消防署)
  6. その他管理対象建築物の維持管理に必要とされる責任者の届け出(例:防火管理者等--管理契約による)
2.設備管理計画の立案

設備管理計画の立案は、主に下記のような項目が挙げられる。

  1. 設備管理業務の計画
    運転監視業務計画、日常巡視点検業務計画、定期点検・測定・整備業務計画
  2. 作業工程の計画
    工事・整備関係の工程計画、年間・月間業務実施計画
  3. 提案・改善関係
    設備更新・リニューアル等を含む維持保全の修繕計画(中期・長期)、改善提案
3.関係部署への報告・連絡・調整等

設備管理業務における主な「報告」「連絡」「調整」はリスクコミュニケーションの視点からも大切。
主な報告・連絡調整事項として以下が挙げられる。

  1. 運転監視、日常巡視点検などにより発見した「異常」「故障」「要修理」などの報告及び意見具申
  2. 定期点検・整備及び修繕修理工事などの実施に先立つ、関係部署(オーナーサイド管理窓口及びテナント等影響部署)への連絡と調整
  3. 管理報告書の提出(オーナーサイド管理窓口等)
  4. 関係官公庁等への諸届け(オーナーサイドの代行を含む)
  5. 事故及び非常時における緊急連絡(特に、重大事故発生時の第一報は素早く実施する必要がある)
4.管理記録の作成および分析

「電気・ガス・水道・油等の使用量」「運転・点検等の記録データ」の整理・分析・評価を行い、その中から合理的運転や省エネルギー等の維持管理上の有用な傾向を把握する。
また、異常予知の検討も併せて実施する。

5.監督官庁及び関係業者等への対応(立会い・折衝等)
  1. 管理対象設備についての官公庁立ち入り検査の立会い、その結果について(必要な場合には)関係部署への報告等
  2. 管理対象設備についての定期点検・整備作業対応、修繕・改修工事の折衝・立会い等
6.業務品質の管理

管理業務の質的内容向上の検討、および「環境管理の5要素(安全・衛生・快適・利便・経済)」充実に関する企画と実施。

☆業務の質的内容

  • 管理の体制:担当者、担当組織、バックアップ体制、帳票類の整備状況 等
  • 機器の状態:維持保全管理状況、機器等の劣化診断 等
  • 運転の管理:設備運用の状況、エネルギー管理 等
7.関係図書・文書などの管理
  1. 関係図面・図書類の整理と保管
  2. 設備機器内容の確認と機器台帳の整備
  3. 工具、器具とその台帳の管理
  4. 消耗品及び予備品の在庫管理
  5. 管理手順書の整備・管理(事故時および非常時の対応・応急処置関係マニュアルを含む)
8.教育・訓練

設備管理担当者に対して、次の教育・訓練を実施(年間計画の作成による計画的な実施が望まれる)。

  1. 法定の保安教育・訓練
    (管理対象設備・施設における法定の教育・訓練事項を把握しておくことが必要)
    例えば
    ・労働安全衛生法に基づく教育
     :就業時教育、作業内容変更時教育、特別教育、安全管理者の選任時研修等
    ・電気設備関係法規による教育
     :電気保安規程に基づく教育等
    ・冷凍機設備関係法規による教育
     :高圧ガス取扱い保安教育等
    ・建築物管理業登録等において必要とされる教育訓練
  2. 非常事態に備えた訓練
    (想定される非常事態の対応マニュアルを整備し、訓練計画に落とし込んでおくことが必要)
    例えば
    ・停電事故時対応
    ・火災時対応
    ・その他BCPに基づく訓練 等
  3. 技術向上のための教育研修
    例えば、関係団体が行う各種技術講習会への参加、OJT教育の実施など。

以上が、管理計画に関する概要ですが、加えて「リスクベースによる管理」の視点での検討が望ましいです。
これにより、管理業務の項目を重点化(階層化)し、より効率的な管理へと結びつけることができます。