「施設管理」と「安全配慮義務違反」について

−−雑誌「安全と健康2000年11⽉」平成11年10⽉20⽇東京⾼裁判決:コメントより−−

☆「施設管理における危険性⼜は有害性の予⾒可能性」と「安全配慮義務」について

倉庫内でフォークリフトを運転して作業中、コンクリート柱とリフトの鉄枠との間に顔⾯をはさまれ負傷し、後遺障害が発⽣した災害が争点となった事例です。
(被災者は当該倉庫での作業経験が1週間程度であった)
事業者のヘルメットの⽀給、及びその着⽤の指⽰監督が争点のひとつとなりましたが、同時に倉庫内の薄暗い環境等が問題となっています。

「被告会社は、⼊出庫作業の際に、⾼く積み上げられた荷が崩れる可能性と倉庫内が暗く低温に保たれていることから、リフトを操作・運転するのが難しい状況であるため、リフトの運転を誤って倉庫内のコンクリート柱に衝突する事故などが発⽣する可能性があることを容易に予⾒できたというべきである。」
「被災者の習熟状況も考え、作業⽅法などを監督指導するなどして安全かつ速やかに作業ができるように配慮すべき注意義務があったというべきである。」
とされました。

<コメント>
「安全配慮義務は、判例で⾔われている内容からみて、労働災害防⽌義務と⾔い換えることができると思われますが、その履⾏のためには、現実にも“災害を起こす可能性”すなわち危険を事前に発⾒(予知)し、その防⽌対策を講ずることが重要であると考えられます。
多くの裁判例も安全配慮義務の履⾏について同趣旨の判⽰をしています。
このように危険の発⾒(予知)は、労働災害を防⽌するために重要であることはもとより、安全配慮義務という法的責任を果たす意味でも重要であるといえます。
この場合、どんな⼩さな危険でも、同じように災害防⽌措置を講ずることは事実上不可能ですし、やろうとすれば極めて非効率な災害防⽌活動になるおそれがあります。
その意味で、損害発⽣の可能性の確率や損害の程度の⾒込みを評価するリスクアセスメントの意義が再認識されてもよいと思われます。
少なくとも死亡や重度の障害につながる可能性がある場合は、防護設備、保護具、安全衛⽣教育などに万全を期す必要があります。」

つまり、施設管理における事前のリスクアセスメントの実施及びそれに基づくリスク低減対策に⼗分な配慮を払っておくべきであるということです。
また係争となった場合においても、その指示等の記録は重要な意味を持つことになります。