熱中症<参考⑤> 水分出納のバランス

○夏場の発汗量と消費エネルギー

高温・多湿環境における労働は、大量の発汗を伴います。
夏場は、筋肉労働をしなくても、1日に2~3リットルの汗をかきます。
(1日に7~10リットルの発汗も記録されているそうです。)
この2~3リットルの発汗に必要なエネルギーは、1,000キロカロリー以上と言われ、体力を消耗し疲労しやすくなります。
(1,000キロカロリーは水泳でクロール1時間のエネルギー消費量と同じだそうです。)

○体内の水分減少による症状

成人の血液量は5~6リットルであり、夏場は体内よりかなりの水分が失われることになります。
この水分の減少を放置すると、血液中の水分が減少し血液が濃縮されて、心臓の負担が増え、循環不全となります。
その結果、組織に対する酸素供給が減少し、酸欠で意識を失うことが起こります。

下表は「脱水症状を段階別に分類」したものです。
体重の4%ほど失われると、運動能力の低下が起こり、10%以上になると死に至るケースが出るそうです。

体重当たりの
水分喪失量
脱水の症状
1%口渇を感じる。運動能力が落ち始める。
2%強い口渇感。気分不快。食欲減退。
3%口内乾燥。血液濃縮。尿量減少。
4%20~30%の運動能力低下。
5%集中力欠如。頭痛、いらいら。眠気。
6%運動時の体温調節障害著明。呼吸促迫。手足のしびれ。
7%運動を継続すると体温上昇によって、衰弱、虚脱する。
○体内の水分バランス

人の体は約60兆個の細胞によって構成され、生体の最大の成分は水で、体重のおよそ60%を占めています。
そして、細胞は体液に浮かんだ状態で、水を媒体として不断に化学反応が行われ生命を維持しています。
また、水分の移動は、血流による場合は速く、約1分間で体内を一巡します。
これに比べ血管壁や細胞壁を通しての水分の移動は、拡散による遅い移動ですが、毛細管の総透過面積が広いため、移動量の総和は大きくなります。

体内の水分は、摂取と排泄のバランスにより一定に保たれます。
健康な成人の場合、春と秋の頃の1日の水分の出入りの平衡は、概ね下表の数値だそうです。

水の摂取量(ml:ミリリットル)水の排泄量(ml:ミリリットル)
食物中の水分  1,300ml尿         1,500ml
飲み水     1,000ml不感蒸泄      1,000ml
代謝水      350ml糞便中の水      150ml
合計      2,650ml合計      2,650ml

※「代謝水」とは、栄養物質が酸化されるときに生成される水分です。(酸化水とも呼ばれます)
※「不感蒸泄」とは、肉体的には激しくない事務所作業でも、体内の水分を絶えず喪失されており、その内訳は、皮膚からは550ml、呼吸により肺からは450mlであり、睡眠中でも一晩でコップ1杯以上の水分が失われます。
測定すると、10分間におよそ1g体重が減少しているそうです。