山口秋芳プラザホテル一酸化炭素中毒事故

平成21年6月山口県美祢市の「山口秋芳プラザホテル」で一酸化炭素中毒事故が発生したのを覚えておられるでしょうか。

施設管理における重要なポイントを示唆してくれている事故です。


当時の記事を時系列に記してみますと

①読売新聞:2009年6月3日14時40分配信
  • 「山口秋芳プラザホテル」で、修学旅行中の小学生や教諭ら22人が一酸化炭素中毒になり、1人が死亡。
  • ホテルには大阪府高槻市立松原小の6年生72人、引率教諭5人ら計約80人が宿泊。
    児童らが2日午後5時過ぎにホテルに到着した後、1階のレストランで「焼き肉バイキング」が行われた。
    児童4人が「気分が悪い」と申し出たため、女性看護師が保健室用に確保していた3階西側の部屋に連れて行ったところ、看護師が突然倒れたという。
  • 児童らは1階に戻り、食事をしていた教諭らに報告。
    教諭らが駆けつけ、相次いで倒れた。
    同5時50分頃、消防隊員3人が駆けつけたところ、3階の部屋で女性看護師と教諭2人が倒れ、さらに別の部屋で○○美術印刷(奈良市)所属のカメラマン、Kさん(26)(京都府木津川市)が倒れていた。
    Kさんは午後7時10分頃、近くの病院に搬送されたが、心肺停止の状態で約30分後に死亡が確認された。
    血液検査の結果、死因は一酸化炭素中毒とわかった。
  • 県警は、ホテルのガス設備の不完全燃焼により一酸化炭素が発生し、3階に流れ込んだ可能性があるとみて、3日午前10時から、業務上過失致死容疑でホテルの現場検証を始め、ガスの配管や排気設備などを調べている。
  • 県警などが通報から約3時間後、3階の部屋で一酸化炭素濃度を測定したところ、測定器の限界値である300ppmを示していた。
    県警は、事故当時、さらに高濃度の一酸化炭素が充満していたとみている。
②フジテレビ:2009年6月4日6時27分配信
  • 山口県のホテルで2日に起きた一酸化炭素中毒事故で、警察は、ボイラーの排気ダクトから一酸化炭素が漏れ出した可能性が高いとみて、調べを進めている。
  • 警察は3日、業務上過失致死容疑で地下にある給湯用ボイラーなどの現場検証を行い、排気ダクトの2階と3階部分から排気が漏れているのを確認した。
  • 警察は、このダクトから死亡者が出た3階の客室などに、一酸化炭素が流れ出た可能性が高いとみている。
  • ホテル側は、問題のダクトについて、およそ40年前から使用し続けている設備で、2003年以降、点検を行っていないことを明らかにした。
  • 山口秋芳プラザホテルは、会見で「(点検の必要性を感じなかった!?)その辺りは、反省すべきだと思います」と述べた。
③読売新聞:2009年6月6日22時36分配信
  • 経済産業省原子力安全・保安院は6日、給湯ボイラーの排気管とつながっている煙突にふたがあり、十分な排気ができずに、事故につながった可能性があることを明らかにした。
  • 一方、同県警は排気管に白煙を注入して排気の流れを調べた実験で、煙突の付け根や周辺などから煙が出るのを確認しており、ふたが事故にどう影響したのかを調べている。
  • 県警などによると、煙突は地下1階に2基あるボイラーのうち、1999年に設置された後に撤去され、再び取り付けられたボイラーの排気設備。
    先端部は石のような素材でふたが付けられていた。
    このボイラーは事故当日稼働していた。
  • 同保安院は5日から排気管に白煙を注入して煙の流れを調査した。
    その結果、事故の主因とは断定しないものの、煙突にふたがあることで排気が逆流し、ボイラーが不完全燃焼した可能性もあるとみている。
  • 6日は、県警と同保安院が事故当時に使われていたボイラーの燃焼実験も行い、死傷者が出た3階客室で一酸化炭素を検出した。
    県警は排気管に亀裂があることを確認しており、ボイラーから排出された一酸化炭素が亀裂から漏れ出し、3階客室に充満した可能性が高いとみて調べている。
④産経新聞:2009年6月7日7時57分配信
  • 地下のボイラーからつながる排気用の煙突上部にふたが設置されていたことが6日、山口県警への取材で分かった。
    県警はこれまでの現場検証の結果、この古い煙突からCOがホテル内に流出したとみている。
  • このボイラーが予備的に使用されていたものだったことがホテルへの取材で判明。
  • いったん撤去後に再設置されたことが分かっており、県警はホテル関係者らから事情を聴くなどして再設置の経緯や使用状況を詳しく調べる。
  • ホテル側によると、ボイラーは2台あり、主に新しい方を使用。
    古い方は「新しいものの予備で、さびさせないために3日に1回程度使っていた」としている。
⑤読売新聞:2009年6月8日3時14分配信
  • 県警が7日、ホテル屋根上に設置されている煙突のふたを取り外し、排気管に白煙を注入して実験したところ、煙は煙突の先端部から大量に排出された。
  • これまでの実験では、煙が煙突から出ず、ホテル内部に漏出していた。県警は、このふたによって十分な排気ができず、事故が発生した可能性もあるとみて、ホテル関係者から事情を聞いている。
  • 県警などによると、煙突は、2基のボイラーのうち、事故当時に稼働していたボイラーの排気管とつながっている。
    先端部には、金属製とみられる白いふたが取り付けられ、接着剤のようなもので固定されていた。
  • 捜査員がふたを取り外した後、ボイラーの排気管に白煙を注入すると、先端部から煙が排出され続けた。
  • 県警と合同で調査した経済産業省原子力安全・保安院は「煙突は換気の機能を十分果たしていなかった」とし、ふたがあるために排気が逆流し、ボイラーが不完全燃焼を起こした可能性があるとみている。
⑥読売新聞:2009年6月8日23時38分配信
  • 経済産業省原子力安全・保安院は8日、給湯ボイラーの燃焼実験で、排気には致死量を大幅に上回る3万ppm以上の一酸化炭素が含まれていた、と発表した。
  • 同保安院は、何らかの原因でボイラーが不完全燃焼し、発生した高濃度の一酸化炭素が、ふたでふさがれた煙突から外部へ排出されずに建物内に充満したとみており、専門家による調査委員会を設け、不完全燃焼の原因などを調べる。
  • 同保安院は5、6日、事故当時に稼働していたボイラーの燃焼実験を行い、排気口に一酸化炭素濃度測定器を挿入したところ、測定上限である3万ppmが表示された。測定開始から数秒で3万ppmに達しており、実際には3万ppm以上とみられる。
    同保安院幹部は「機器の燃焼状態が相当悪かったことを示す異常な数値」としている。
  • 死亡したカメラマンらは、ホテル3階の客室で一酸化炭素中毒に陥ったが、ボイラーを30分間燃焼させた後の調査では、3階の非常階段付近で5000ppm超の一酸化炭素が測定された。
  • ボイラーはホテル屋根上の煙突につながっているが、先端部は金属製のふた(縦70センチ、横67センチ)でふさがれており、排気管内にたまった一酸化炭素が3階に漏出したとみている。
  • 財団法人日本中毒情報センター(茨城県つくば市)によると、空気中の一酸化炭素濃度が1000ppmを超えると、意識低下などの症状が表れ、5000ppmでは5分で死に至るという。
☆追記:毎日新聞:2009年6月6日11時22分配信
  • 事故時に稼働していたボイラーの製造会社によると、2007年、ホテルから「故障で動かなくなった」との連絡を受け、新型ボイラーと交換。古いボイラーについてホテル側は「撤去する」としていた。
    実際、担当者が同年2月の試運転で訪れた際は撤去されていたという。
  • しかし、今年(2009年)4月末、新型の修理のため再度訪れると、古いボイラーが使用され、2系統ある排気管の古い方につながれていたのを確認した。
    今回、ふたがしてあったのは、その古い排気管の先にある煙突だった。
  • この製造会社によると、排気口にふたをすることは通常あり得ず、ボイラー本体は多少の雨などは入っても問題のないように設計されている。
    この会社は古い排気管の工事には携わっていないといい、担当者は「ふたと聞いて驚いている。車のマフラーをふさぐようなもので極めて危ない」と指摘する。

山口秋芳プラザホテルの煙突。排気口上部がふたで覆われていた(毎日新聞)

煙突に蓋!
山口秋芳プラザホテルの煙突。排気口上部がふたで覆われていた(毎日新聞)

当筆は思いました「何でこのようなことが──」

  • オーナーさんが、或いは担当者が替わった際に連絡がなかったのか?
  • ボイラーを運転する前に、排気系統等を確認しなかったのか?
  • ホテルを管理運営する人にとっては、施設管理の重要性には関心がないのか?
  • 問題を指摘する人が居なかったのか?
    (ボイラー運転員の力量?)
    (指摘しようにも、管理側との間に運営の権威勾配があったのか?)

部門間のコミュニケーションの問題!?
施設設備管理履歴の伝達の問題!?
(「問題はインターフェースで起きている」--古い言葉になっているかと思いますが──)

いろいろと管理上のポイントと思われる事項が浮かんできます
施設管理における重要な問題点を示唆してくれている事故です。