2013年10月11日 福岡医院火災②(運営・管理)

前の記事:①電気設備管理

10月11日未明、福岡市博多区住吉の医院で、入院患者ら10人が一酸化炭素中毒で死亡した火災事故。
この火災事故には多くの考えさせられる“問題点”が浮き彫りにされているように思います。
「多くの専門家が保守、工事等に関わっていることが考えられるが、それらの人達はどう対応していたのか?」
「病院側の施設運営における取組み姿勢は?」
「消防法と建築基準法の接点における運用は?」
問題を一つひとつ取り上げていくと、単純に見えますが--。
これらの問題点を、これから数回にわたり筆者なりに考えてみたいと思います。
(独断独善の要素が多々あると思います。 ご容赦ください)


院長「すみません。自分、患者さんを殺しました。」
--と、院長はすべてを背負おうとの姿勢を示されていますが

<施工管理>

☆医院の一部が3年前、市に届け出ずに増築されていた。
--建築基準法に基づく「準防火地域」内にあり、建物に一定の耐火性が求められ、増改築には市への建築確認申請が必要であった。

  • 院長は「認識不足だった」としているが、建築基準法の細部まで知らないはずであり、本来知っている必要もないと思われます。
  • それぞれの工事等に関わった専門業者はアドバイスしていなかったのか?
  • 設計事務所を通していたら、適正に工事はなされていたかも?!
<管理体制>

☆夜間担当者(夜間看護師)1名

  • この1名で対応できる範囲は考慮されていたか?
    対応不能な状況下におけるバックアップ体制は検討されていたのか?
    (上階には職員が宿泊しており、非常時の対応体制について、検討していなかった?)
  • 小規模施設(宿泊施設も含めて)においてはこのようなケースが多いのではないか!?

☆防火管理者が適切に選任されていなかった。

  • 防火管理者として70歳代の院長の母親が選任されていたとのことですが、防火管理者としての任務が果たせていたかは疑問です。
    事務長等の責任体制の要になる立場にある人がつくべきなのですが、現実には名目上の選任も多いのではないかと思われます。
  • 防火管理者の選任義務がある建物は全国で約107万件。
    その内の約2割は未選任とのこと。
    重い責任を負う立場ですが、日常は軽視されがちです。
<火災訓練>

☆消防法による訓練を実施していなかった

  • 消防訓練に参加予定でなかった人が、当直していた?
    すべての人に消防訓練を周知していたのか?
    訓練参加を義務づけるところまでは運営上ムリがあるのではないか?
  • 訓練に参加したとしても、「初期消火」「非常通報」「避難誘導」等の非常時対応をどのように想定して訓練するのか?
  • もし、初期の炎を確認した時点で、消火器による消火活動をしていたら──新聞報道には、「当直看護師は加温器周辺で腰の高さ程度の火炎を確認した」とあります。
    消火器による消火で “ことなきを得ていた” 可能性もあったのでは--?
<施設管理>

☆(過去の)消防署の査察で、厨房の排気ダクトに油がたまっており、清掃の指導があった

  • 厨房排気ダクト内の油分の堆積は常態としてあり、火がダクト内に入るような事態があると火災となる可能性があります。
    ダクト内消火設備も必要ですが、ダクト入口での油分シャットと、ダクト内油分除去の清掃が基本です。

☆火災時に閉じるはずの防火扉が閉じていなかった
--煙が上階に上り、一酸化炭素による死亡事故の主因となった。

  • 「火災階の上階は危険」「縦穴空間の煙突効果」等々以前から言われていることで、施設における主要な潜在危険要因のひとつです。
    しかし、日常においては、軽視され、防火扉の動作域内或いは避難路には荷物が置かれます。

以上、新聞等で報道された事項を挙げましたが、これ以外にも多く考えられます。
日常の居住施設にも「危険要因がいっぱい潜在している」ということの再認識が必要と思います。

また、それぞれの事項(問題点)について考察を深めていけば、いろいろな対応すべき課題に突き当たります。
それらの課題は“人間特性の問題”と“経済上の問題”に集約されるように思われます。
つまり“人災”です。
それは院長の言葉にも表れていますが---

続き:③消防法と建築基準法の接点