2013年10月11日 福岡医院火災③(消防法と建築基準法の接点)

前の記事:②運営・管理

10月11日未明、福岡市博多区住吉の医院で、入院患者ら10人が一酸化炭素中毒で死亡した火災事故。
この火災事故には多くの考えさせられる“問題点”が浮き彫りにされているように思います。

「多くの専門家が保守、工事等に関わっていることが考えられるが、それらの人達はどう対応していたのか?」
「病院側の施設運営における取組み姿勢は?」
「消防法と建築基準法の接点における運用は?」
問題を一つひとつ取り上げていくと、単純に見えますが--。
これらの問題点を、筆者なりに考えてみました。
(独断独善の要素が多々あると思います。 ご容赦ください)


多くの人が死亡するという惨事を招いた最大の要因として当初から指摘されていたのが「防火扉が作動しなかった」という問題でした。
医院の1~4階にあった計9枚は大半が開いたままで、機能しておらず、煙は建物内に充満したというものです。
そして、医院は20年以上も防火扉の点検をしておらず、設備そのものも老朽化していた。

消防法と建築基準法の関係について、当時の新聞記事によりますと

  • 防火扉が閉まらなかった背景には消防の査察と自治体の点検にまたがる「二重のチェック漏れ」があった。
  • 安部整形外科の防火扉は1階に3カ所、2階に2カ所、3〜4階に1カ所ずつの計7カ所。
    火元の1階は熱を感知して自動的に閉まる仕組みで、2階は煙感知式だが作動しなかった。
    3〜4階は常時閉鎖のはずだが開いていた。
    査察では、閉鎖を妨げるものが置かれていないかなどは視認したものの、作動状況まではチェックしていなかった。
  • 原因は、防火扉の設置基準が、消防法ではなく建築基準法で定められていることにある。
    消防当局関係者は「(感知器と結ぶ)配線が生きているか、扉がちゃんと閉まるかなどのチェックは査察ではなく、ビルオーナーが点検業者に頼む筋合いのものだ」。
    査察で見るのは、感知器と連動する「制御盤」の通電状況などに限られるのが通例という。
    明白な建築基準法違反があれば自治体に報告するが、基本的に「同法は所管外」が消防のスタンスだ。
  • チェックの網から漏れるもうひとつの理由は、報告対象外だったことだ。
    自治体は医療施設に防火扉の作動状況などの点検報告を求めることができる。
    福岡市では、20床以上の病院でも「3階建て以上かつ延べ床面積300平方メートル超」の大規模なものに限定し、3年ごとに建築士の点検を受けさせる。
    国土交通省は「小規模施設をどうするかは自治体が(点検の)負担感とのバランスで決めること」と説明する。
    対象外施設の点検は所有者の自主性に委ねられている。
  • 過去に防火扉が閉まらないことで被害が広がった代表例は、2001年に44人が死亡した新宿・歌舞伎町の「明星56ビル」火災だ。
    安部整形外科の1階に設置された「熱感知式」は1974年の建築基準法改正以降認められていないタイプ。
    開院は69年で「既存不適格」の状態が続いたことになる。
    自治体は新築時に建築基準法令に適合しているかを確認するが、その後は立ち入り検査がなければチェックの機会がないのが実情だ。

防火戸、防火ダンパー等については、消防法と建築基準法によるチェックがありますが、対象設備と作動確認において隙間とスタンスの違いがあるようです。

本来、設備を設置した理由を説明する責任は、設計者にあり、その説明を受けて、維持管理する責任は、所有者或いは管理者にあります。
また、チェック(アドバイス)をする立場の人も必要であり、それが法規による定期点検であり、また監督官庁の査察等でありましょう。
消防設備点検、防火対象物点検、建築基準法12条による調査等があります。

防火戸、防火ダンパー、排煙窓等排煙設備、非常照明、非常電源等は建築基準法によるもの
煙感知設備、消火設備、避難設備等は消防法によるもの
維持管理する立場においては、建築防災設備は規制が複雑な面があります。
法規の整備が求められるところでもあると考えます。

また、事故等で停電したときの生命線のひとつとなる自家発設備(自家用発電設備)等についても法令により呼び方が異なり、使い分けに苦労します。

  • 消防法:「非常電源」として専用受電設備、自家発設備、蓄電池設備、燃料電池設備
  • 建築基準法:「予備電源」として自家発設備、蓄電池設備
  • 電気事業法(電気設備技術基準):「保安用電源」(法規上はこの名称は記されていないようですが、機能維持のための電源)