“心のストレス” について

先日、健康に関するセミナーに参加する機会があり、興味深い話しを聞きました。

人が“老化”していくのは加齢、糖化、酸化によるとのこと。
ガン、糖尿病等は遺伝子が傷つくことにより起こり、傷ついた遺伝子はコピーされ倍増していく。
そして、その遺伝子の傷の原因は「活性酸素」!
その活性酸素をつくり出す原因は、生活習慣病から種々の悪い環境因子等生活環境の中にいろいろあるが、最も影響のあるのが「身体に負担となるストレス」それも特に「(自分を責める)強い自責の念からくるストレス」であるとのこと。
人体には生体防御システムがあり、いろいろな生体にとっての悪因子に対抗しているのですが、その拮抗状態が崩れたとき、遺伝子の 傷が生起され始めるとのことです。
決め手の言葉は「“見た目年齢”は“内臓年齢”」でした!
--いくら表を綺麗に繕っても、内部が悪ければどうしようもない。健全的な美しさは、内部より自然に湧出する!

以上については、以前より薄々とは知っていた内容でしたが、
後日、「道徳科学の論文」2冊目4章7項15節「後悔と肉体との関係」を読んでいて以上の講演内容を思い出し再認識しました。
著者である法学博士廣池千九郎曰く

「後悔に2つあるので、第一は道徳もしくは宗教上の教訓に感じて懺悔《ざんげ》をなして改心すること。第二は悪事をなすかもしくは失敗を招くかして悔恨《かいこん》をなすことです。
第一は肉体に好影響を及ぼして精神を和《やわ》らげ、疾病を治し、健康を増し、もしくは長命を得るに至るのです<ジェイムズ著『宗教的経験の諸相』127頁以下参照>。
第二は失望もしくは落胆の精神作用を伴うものなるが故に、非常に身体に悪影響を及ぼして、疾病もしくは短命の結果を来たすものであります<ウェスタマーク著『道徳観念の起原及び発達』第1巻105~107頁参照>。
ドイツの文豪シラー(Friedrich Schiller,1759-1805)の著書に盗賊(Die Rauber,1781)という戯曲がありまして、その筋書きは悪い子が父を殺そうとしたが、刃物《はもの》もしくは毒薬にて殺せば刑法に触るるが故に、父の心を苦しめて自然にこれを死に導くようにしようと計画して、研究の結果、その父をやむを得ざる事情の下に後悔せしめて、ついにこれを殺したというようなことが書いてあるのです。
 かくのごとくただ単に前非《ぜんぴ》を悔ゆるということは非常に精神を消沈さするものであって、これは私も従来たくさん経験を有しておりますし、また知人における実例もたくさん見ております。」
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後悔は「強い自責の念(ストレス)」、つまり活性酸素を多く発生させる強力な原因。
上記廣池博士の「道徳科学の論文」は90年くらい前に発刊された大著ですが、その中での指摘が現在の科学の発達による「ヒトゲノム解読」により明らかにされるようになり、またその対応手法もいろいろと考え出されようとしています。
しかし、活性酸素の発生要因においてもことストレスに関しては、人の精神作用も大きく影響しています。
つまり、問題に対する個人の受け止め方の面も大きいということです。
現在はやりの言葉で言うと「レジリエンス」、平易には「もちこたえる力」ということになるのでしょうか。