“シンドラーエレベーター事故” について

平成27年9月29日シンドラー社エレベーター死亡事故の東京地裁判決が出たとの報道。
強い関心を持っていた事故でしたが、年月が経ち遠ざかっていました。
事故が起きてから10年近く経っています。その判決がようやく出たのかという感です。
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この事故は、平成18年(2006)6月、東京都港区のマンションで、男子高校生がエレベーターに乗り降りようとしたところ、ドアが開いたまま上昇し、カゴの床と外枠の間に挟まれて死亡したというものです。
扉が開いたままエレベーターのカゴが上昇したのが原因で、エレベーターの設計上の問題及び保守管理上の不備が問われました。
判決は、シンドラー社の点検責任者に無罪判決、保守会社3被告は有罪というものです。

主な争点は、「事故原因とされるブレーキ部品の異常な摩耗がいつ始まったか」「シンドラー社及び保守管理会社の担当者はその事故を予見できたか」等でありました。
そして事故当時の保守管理会社は、「事故直前の点検で異常を見逃した」と認定され、「保守管理体制を構築する義務を怠った」とされています。(保守管理会社が数度?変更になっていたと記憶しています。)

保守管理会社は事故の2ヵ月前に事故を起こしたエレベーターの保守を始めています。
そして事故の9日前に点検を実施しています。
判決はこの時点ですでにブレーキの摩耗は発生していたと判断し、それを放置したのは管理会社側の過失としています。
そして、「保守管理会社が事故機の構造を十分に調べないまま保守管理を請け負った」点を問題としています。
(シンドラー社から点検マニュアルを入手していない。)
また「点検は五感で足りると軽く考えていた」というような安全軽視の体質を指摘しています。


シンドラー社は、その後も事故等があり、安全に関する姿勢を指摘されています。
製造物責任が問われている今日、メーカーの責任はより重要になってきているはずです。
安全面においても、8割方は設計/製造段階で決まるとも言われています。
次に保守管理会社ですが、業務を受注するために保守管理価格を極端に下げ、中身のない業務になっていないか?
点検には“5感”は大切ですが、それはしっかりとした保守管理能力があってのうえでの話です。
通常は何も起こらない(大きな異常の起こらない)ことを前提にした業務になっていないか?
そして次第に中身のないものになっていないか?
異常時、非常時の対応能力は養われ維持されているか?
というようなことが自問自答されているか? ということです。
昔、ある大手エレベーター管理会社の人に聞いたのですが、一人前の保守管理員を育成するのに2000万円程度の教育経費をかけているとのことでした。なるほどと思いました。決して軽々に保守管理費を安くはできないはずです。
保守管理費の安さのみで営業してくる会社には疑問を持つべきです。
そう考えると、発注者側の「業者を見る目」が重要になってきます。
--保守員の教育はどうしているのか? 異常時のバックアップ体制は実効のあるものなのか? 等々を見る目です。
見積り或いは入札で、ただ金額のみで業者を決める。
そして下請をさせればその業務をチェックしない(する力が無い?)。
責任は業者任せ。
このような点が発注者側にも問われるようになるのではないかと思います。
この点が深く議論がされないことが気になります。