「リーダーシップ論」について ②

今まで、経済アナリスト藤原直哉氏の企業文化論について記してきました。
どのような企業文化を持つ組織に身を置くかは、そこで働く人の人生に大きな影響を与えます。

そして、その企業文化において決定的に大事な要素が「リーダーシップ」です。
藤原先生は、「建設的な文化をつくるために具体的にどうすればいいのか?」について、「建設的文化をつくるサイエンス」として、この“リーダーシップ論”についても言及されています

前号では、「リーダーシップの技術体系」の9項目を列記しました。
今回は「①意思決定技術」について、藤原先生の示唆を挙げたいと思います。


「意思決定のスタイル」は大まかに分けて、全員で決めるのと、独りで決めるのと、二通りある。
前者を「コンセンサス」といい、後者を「独断」という。

「独りで決めるより、みんなで決めることが大切」と言われるが、リーダーシップ理論では、全員で決めることが独りで決めることよりも、常によいことだとは説かない。

ものごとは、みんなで決めなければならない時と、独りで決めなければならない時がある。
リーダーはみんなで決めることも、独りで決めることも、臨機応変に使い分けられなければならない。
なんでもかんでもみんなで決めたがるコンセンサス型の人は、リーダーとして不適切である。

世の中には、合議ではなく、どうしても独りで決めなければいけない時がある。
典型的なのが、緊急の時である。
大災害や突発事故の際は、会議を開いている時間はない。
トップが全責任を持って、即時決定するしかない。

その反対に、みんなで決めなければならないのは、新しい事業を始めるときである。
これから何ができるか討議するプロセスが大切である。
トップが一方的に任務を命令すると、みんなのやる気がなくなってくる。

建設的文化は、メンバーから自発的に出てくるものを重んじる気風である。
だが、唯一犠牲にするものがあるとすれば、それは時間だ。
みんなで決めるには時間がかかる。
言い換えれば時間への投資である。

しかし私(藤原)は、時間が許す限りみんなで決めればいいと思う。
意思決定に参加すれば、自己の参加意識と帰属意識が強化されるからだ。
参加意識を高めると、自分たちで決めたことは自分で守るようになる。
決めたことが守られるか守られないかで、業績に雲泥の差が出る。

ただし、みんなで決めるときに注意すべき点が一つある。
それは、情報が不十分だと間違った選択をする可能性が高いということである。
会議では、内容空疎でも声高に自信タップリにまくしたてる人間が、とかく周囲を圧倒する。
頭数が揃っていても、本当に必要な情報が全部揃っているかどうか、常にチェックが必要だ。

意思決定のポイントは、時間への投資を行い、人々の参加意識とやる気を高めて、建設的文化へ近づけることだ。
時間へ投資する余裕がなければ、独りで決めるしかない。

いずれの場合にも、最終的な意思決定の責任はリーダーが負う。
責任を放棄することは許されない。


リーダーとしての、意思決定の姿勢について、「コンセンサス」と「独断」の使い分けをハッキリとまとめてくれています。
しかし、このように実行していければよいのですが--。
リーダーとして、これらの意思決定のプロセスを進めていくには、その中身が課題となります。
「全体を見通せる力」「まとめ上げる力」「結論を実行へと導く力」等々考えられますが、リーダーとしての資質(実力)です。
(もちろん『人間性』と『価値判断の正当性』は前提条件ですが---)
難題山積ですが、技術論として進めていきたいと思います。

 

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