「FCP:災害想定訓練③:訓練の充実について」<26>

災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び負傷しないこと」は最優先ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討しておく必要があります。

各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。

この指針に示されている内容は、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)

前回は、「FCPの定着」における「災害想定訓練の実施」についてでした。
今回は「FCPの定着」における「災害想定訓練の充実」について考えてみたいと思います。


「災害想定訓練の充実」については、今までのFCP策定において検討・実施してきた内容をより深めていくということがテーマとなります。
BCPでの記事「災害想定訓練の充実・実施」の内容をより深めていくということになります。

主に下記項目の検討の深めということになります。

  • 課題設定
  • 課題に沿う被害事例の想定(時期・時刻・社内・社外等)
  • 時系列シナリオの検討

これは、「“場”のKYT」(個々の“場所・場合”を想定したリスクアセスメントに基づく危険予知訓練)として、充実させていくことでもあります。

前月では、<「安全ゾーン」と「避難ルート」の例>として下記を挙げましたが、それ以外にも個々のケース想定で充実化の必要な事項が出てくると思います。

  • 事前に想定していた「安全ゾーン」への移動
    --その時間の目安は5~8秒程度といわれています(緊急地震速報から揺れ出すまでの時間と言われています)
  • 事前に想定していた「避難ルート」を選択する
    --それぞれの場所における避難ルートの事前検討(ルート上の障害物をなくしておくこと)
  • 夜間の避難を想定してみる
    --停電発生、暗闇の中の避難(懐中電灯/充電式ライト等の必要性)
    --暗い部屋で照明を点灯しようとしてスイッチを探す経験はよくします。
    小さなグローランプが光っていれば、助かりますが、それがなかったら手間取ります。
    たとえ、枕元に懐中電灯を準備していたとしても、それが地震で飛ばされてしまっていたとすれば大変です!
  • ----

検討を深める想定技法の一つとしてBCPの記事「災害想定訓練の充実(参考)」で記しているワットイフ法の活用も考えられます。

【What-if展開】
発生時期・発生場所等の「What-if展開」による想定訓練(“場のKYT”)
What-if(もし~だったら?)という問いかけにより、「“場”の想定」を深める。
(想定したシーンで、もしあったら困る要素を予見してみる)
「夜だったら?」
「乗り物に乗っていたら?」
「あの場所(危険場所等)に居たら?」
「あの仕事(危険業務等)をしているときだったら?」
「周りに人が居なかったら?」
「風雨が強い状況であったら?」
「責任者が不在であったら?」
「対応の判断をせまられたら?」
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この他にも、いろいろな場所・場合での身を守るための行動が考えられます。

  • 「キッチンでは?」
    ・調理中だったら? 火を消す!
    ・熱湯を浴びたら?
    ・冷蔵庫が倒れてきたら?
  • 「古い木造家屋では?」
    ・あわてて1階へ降りない方が安全かも!?
    ・階段の壊れ? 1階が倒壊?
  • 「---」

以上のような検討を深めるために、今まで検討してきたように、家の中あるいはその周辺における「潜在的な危険源(ハザード)」およびそれらによりもたらされる「危害(事象)」を見定めていく必要があります。
その一つの方法として、次のようなリスクアセスメントにおいて使われている「ガイドワード」も参考になると思います。

「墜落・転落」「転倒」「激突」「飛来・落下」「崩壊・倒壊」「激突され」
「挟まれ・巻き込まれ」「切れ・こすれ」「踏み抜き」「おぼれ」
「高温・低温との接触」「有害要因(有害物)との接触」
「感電」「爆発・破裂」「火災」「交通事故(道路)」「---」

また、以下のようなヒューマンエラーを理解するための「ホーキンスのSHELLモデル」も、各要素間の関係においてヒントになかもしれません。

shelモデル

L(中央):自分(当事者)(liveware)
L(下段):支援者--他の人との関係(liveware)
S:ソフト面--手順・マニュアルなどのソフトウエア(software)
H:ハード面--道具や設備などのハードウエア(hardware)
E:環境面--明るさや騒音などの環境(Environment)

※枠が波打っているのは、それらの関係性は固定的ではなく、常に変動していることを表しています。

以上のような検討の深めにより、優先的に対応すべき事項が見えてくる(リスク評価が出来る)かもしれません。

(この拙いブログは、まだ災害について十分な実感を持てない筆者自身への「災害意識の駆り立て」でもあり、また「なかなか災害行動へと結びつかない焦り」でもありますが、何か皆様のFCPを考えるうえでのきっかけともなれば幸いに存じます。)