BMドクターG⑤:異常事象への対応

『ビル管理のドクターG』
 ビル管理技術者は「ビルの総合診療医(ドクター・ゼネラル)」?!

 古い「ビル防災」の本を眺めていたら、「ビル管理はビルのお医者さん」という小見出しがありました。
 ビルの設備等の維持管理に関する様々な課題が持ち込まれ、それらをカバーしなければならないビル設備管理技術者は、多岐にわたる建築設備の管理に関する知識と資格をカバーするビル運営を支える存在。
「ビルのお医者さん」という小見出し、なかなか的を射ているように感じました。
NHK-BSで放送されていた『総合診療医ドクターG』を模倣して、「ビル管理(BM)のドクター・ゼネラル」と格好をつけてみました。
その理想像も探りながら話題にしてみたいと思います。

異常事象(事故・故障等)への対応
--突発的に異常が発生したとき--

前号で設備劣化への対応について少し触れましたが
もし突発的に異常事態(設備故障)が発生したら(遭遇したら)---
その対応にパニック状態にならず、出来るだけ冷静に対応できるようにしておきたいものです。

今までの事故においても、緊急事態の発生時に適切に対応できなかったことによって起きているケースが多くあります。
定常作業或いは繰り返される非定常作業は、あらかじめ事故のシナリオが想定でき、対応策を準備することが可能ですが、その想定を外れたような事態の場合、熟練した者といえどもとっさには対応できないことが考えられます。
「緊急事態においては、人間はどうしても視野が狭くなり、的確に対応できない」という課題です。

では平常時の準備として、どうしたらよいのかーー?

多くの先輩達が貴重な示唆をしてくれていますし、またルールとしても示してくれています。
それは「(事前の)リスクアセスメント」という手法の活用です。
これで全てが解決するというような特効薬ではないのですが、管理員としての対応リスクを少しでも減らすことができる有効な手法です。

先ず管理対象設備或いは施設の有する危険源を洗い出して、自分達が遭遇するであろうリスクの内容を見定め、それを評価し、そしてそのリスクの低減対策を検討しておくということです。

それは、利用者或いは施設で働く人の危険・損害の防止・軽減へもつながっていくことにもなります。

昔から言われていることでもあり、いろいろな言葉で語られています
 「事後の100策より事前の1策」
 「事故に立ち向かうのは勇者、事故を未然に予防するのは賢者」 等々

また、リスクアセスメントの結果は、作業着手前の危険予知活動(KY活動)にも有効に活用できます(活用すべきです)。
「リスクアセスメント」の結果、リスク低減対策を試みても、解決できずに残っているリスク(残留リスク)が存在します。
直面する作業において、その残留リスクを確認し、作業のリスクを見定めた上での「KY(危険予知)活動」の展開です。

生産現場或いは工事現場では、リスクアセスメントは日常化している活動であると思われますが、BM設備管理業務においても管理のベース活動として位置付けることが出来ます。

『リスクアセスメント』を簡潔に言うと
「危険な所を前もって見つけ出しておいて、事前にそれがどのくらい危険なものであるかを評価し、その評価の大きさに従ってきちんと手を打っておく」と表現することができます。
--危険な所を見つけ出すこと(リスクの洗い出し)がポイントとなります。

『KY(危険予知)』については、一般的に下記のような手順ということができると思います。
 ①1人で或いは複数人で、業務に向かう前に、余裕の時間を設定する。
  (特に、注意を払う必要のある業務については必要)
 ②直面する業務におけるトラブルとなる懸念事項をピックアップしてみる。
  (3つ程度に絞り込む)
 ③その中から特に注意すべきものについて、その対応を考える。
  (複数人で作業する場合は、その内容を共有する)
 ④その注意事項の下に、作業に取り組む。
  (合意を図る--頑張ろうの唱和等

尚、上記「リスクアセスメント」「危険予知」に関しては、多くのテキスト類が出版されています。

危険予知(KY)を創出した中村昌弘氏は、下記のように述べておられます。
「(事故は)現業部門の管理者が日頃の現場の実態に目を向けて潜在する危険を洞察していれば、防げたものばかりであるといっても過言ではありません。
日頃から現場で現物を見ながら『設備・機械はどのような動きをするか?、環境は大雨や強風などによってどのような異常な状態が生じそうか?、これらの動きや環境の変化の中で、人はヒューマンエラーをすことを念頭において、どのような行動をしそうか?、化学物質や危険物はどのようなときに、どのような異常が起こり、どのような危険有害環境が生じそうか?』を思考して、潜在危険を洞察することが大切です」。

from 中村昌允氏「安全工学の考え方と実践」

警備員においては、警備業法により、半年ごとの教育が義務化されています。
これは、「繰り返し教育訓練することではじめて行動に結びつく」という主旨で実施されるのですが、同じことは設備管理における危急時対応においても言えると思います。
また施設内の使用環境も年数を経ることにより変わっていきます。
その変化に合わせて、リスクアセスメントの見直しも必要となります。
このような日常におけるリスクアセスメントの深めが、危急時において(精神面での裕度においても)生きてくると思います。

緊急時には、直ちに対処する必要に迫られますが、そのときの指揮・指示事項が結果に大きく影響します。
“BMドクターG”としての設備管理責任者はその指揮者の立場に立つことになります。

人間は、緊急処置を要する突発的なトラブルに直面すると、早く復旧させることに意識が集中し、安全に対する配慮が欠けやすくなります。
常識として知られている手順等でも、先を急いで守られないというようなことも生じかねません。
それだけに、作業によって生じる問題や危険を察知する安全を念頭に置いた指示が求められます。