「FCP:ライフラインの停止について」<17>

災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び負傷しないこと」は最優先ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討しておく必要があります。

各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。

この指針に示されている内容は、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)

前回は、「事前対策」における「避難場所への避難」についてでした。
今回は「ライフラインの停止」について考えてみたいと思います。


地震等の災害が発生すると、電気・水道・ガス等のライフラインが止まります(高い確率で供給停止が発生します)。

何時も引用させていただいている『イツモノート』には
「コンクリートで固められた都会でライフラインが止まるということは、原始よりも不便で不安な状況におかれることを意味します。」
「それまで当然と思っていた価値観や常識とは別の心構えとしてその場に応じた工夫が求められることになります。」

とあります。

一般的には下記のようなライフライン停止への対応事項が挙げられています。

【水】水道が出なくなる(水の確保)

普段から水を溜めておくこと(避難生活では水は貴重品になる)

  • 地震の後、水道が使えるようなら、先ず、ポリタンク、ペットボトル等に水を溜めることを考える。
    夏季は冬季より更に水の重要性が増します。
    「1人1日3リットルの水を3日分」といわれます。
    1週間生き延びるには1人当たり21リットル必要となります。
  • ペットボトルの場合、利用を考慮して500ミリリットルと2リットル両方の容器を用意する。
    容器の中に空気が残らないようにし、しっかり栓をしておく。
    水は1週間程度で入れ替える。
    --浄水器を通した水は塩素による消毒効果を期待できないので毎日交換が必要。
  • 保存した水を飲用するときは、その前に煮沸する。
  • 氷としての貯蔵、常時ヤカンにいっぱい水を入れておく等もあり
  • 飲用とそれ以外の使用に区別
  • 近くの水のある場所は?
    風呂に溜めた水は雑用として活用できる
  • 水を運ぶ容器が必要になる
    (例:ビニル袋を活用して容器にする)
【電気】停電が発生する
  • 明かりがなくなる
    懐中電灯・履物は手近に
    (暗闇のなかの明かりは心の安定になる)
    食事の時ぐらいはロウソクで十分
    (弱い光でも十分可能ということ)
  • いつもの情報がなくなる
    携帯ラジオ、車のラジオは強い味方になる
    (何時も情報を得ているテレビ、インターネットは使えなくなる)
  • 人間社会の基本は口コミ
    口コミ・デマも多くなるが、コミュニティが情報源となる
  • 電池の補充には気を配る
    年4回程度使用可かどうか確認する

災害避難時は、再送電時の屋内漏電等の事故を防ぐため、屋内受電盤のブレーカーを「切」にしておく。
ブレーカーの「入」は、コンセント負荷を確認して(すべて抜いて)の後にする。
--屋内配線の漏電、使用電気機器の使用状況に注意すること。

切れた電線や、電線が樹木/看板/アンテナ等に接触しているときは、電力会社の対応を待ち、(漏電を考えて)周囲のものに触らないようにする。

【ガス】ガスが使えない
  • カセット式のガスコンロで代用可能
    ←ボンベは10本ほど備蓄しておくと安心
    (定期的にサビの発生等に注意しておく)
  • 知らずにガスが充満しているかもしれません。
    不用意に火を使わないことは基本中の基本
    ←辺りが暗いのでとっさにライターをつけようとした!
    (ガス漏れ被害は多くの事例があります)
  • 消火器の常備もイロハのイ。
    ←初期消火に失敗すると燃え広がる!
    (地震→火災の拡大という被害の構図があります。特に人口過密地域においては被害が拡大する。)
  • ブレーカーをすぐに落とす
    ←(漏電による火災の発生防止のために)ブレーカーが切られているか確認できるまで送電しない!
    特に集合住宅のような場合は、すべてのブレーカーのOFFを確認するまで電気を送れない事態となる! <c.f.>上記「停電対応」

都市ガスは空気よりも軽く、プロパンガスは重い。
ガス漏れ時、ガスの排除する際、ガスが天井を這うか、床面を這うか認識しておく必要がある。

漏れたガスは団扇等であおいで外へ出すことになるが、着火源となるものには十分に注意し、慎重に行う必要がある。

電気関係のスイッチのOn・Offや、コンセントの抜き差しでの火花が着火源となり得るので、触らないように注意!

プロパンガスのマイコンメーター
マイコンメーターには、ガスの流れや圧力等に異常が発生した場合や震度5以上の地震が発生した時、内蔵されたコンピューターが危険と判断し、ガスを止めたり警告を表示する機能がついている。
メーターの表示ランプ等で状況を確認できるようになっているが、復帰には上記注意が必要。

グラピタホース
プロパンガスの場合、地震等で容器転倒時、ガスホースが引っ張られると、ホース内の安全機能が作動し、自動的にガスが止まる機能(設置業者に確認必要)


日常当たり前に、スイッチを入れれば電気機器は機能するし、栓をひねれば水は出る、ボタンを押せばガスが使えます。
しかし電気・水・ガス等のライフラインが停止しますと、当たり前の日常が一瞬のうちに消え、不自由の状態が到来することになります。
現代生活に慣れていると耐えられない状態です。
まさに「原始よりも不安な状況におかれる」ことになります。

数年前、配電線事故で電気が使えなくなった時、手持ち無沙汰で何もできず、自宅周りをグルグル回って工事車の来るのを待っていたことを思い出します。
(のんびりと、寝そべるということができませんでした!)

災害時のライフライン停止は、このような停電の出来事の比ではないと思います。
生命の維持という緊急事態です!
(私にはその耐性ができているか? 不安です)
日頃から心がけておきたい(リアルにイメージ化しておきたい)緊急事態です。

なお、ライフラインの復旧目安として、下記のような日数事例が挙げられています。

ライフラインの復旧

レジリエンス『先ずは生き延びることへの柔軟対応』

★『釜石の軌跡 三原則』
 --鵜住居小学校の避難例
①想定にとらわれるな
②最善を尽くせ
③率先し、避難せよ


★『想定外に備える』
 --南三陸町立戸倉小学校元校長 麻生川敦氏講演より
  (東日本大震災時、子供たちの避難指揮をとった震災当時の校長)
①想定外が起こり得る覚悟をもつ。
②想定外の判断を行う目を持つ。
③臨機応変に対応する力を上げる。

(この拙いブログは、まだ災害について十分な実感を持てない筆者自身への「災害意識の駆り立て」でもあり、また「なかなか災害行動へと結びつかない焦り」でもありますが、何か皆様のFCPを考えるうえでのきっかけともなれば幸いに存じます。)