重要業務のアウトソーシング

国民の大多数がLINEを利用し多くの自治体も活用するなかで、セキュリティーにおいて看過できない問題が発生した!
LINEにおける個人情報が、下請けの中国企業において自由に見える状態になっていた!

等々 「LINE」の個人情報管理を巡っての苦言が飛び交いました。

LINEによりますと、AI開発を行っている子会社の技術者4人が、2018年8月から32回にわたって、利用者の名前、電話番号、メールアドレスなどの個人情報が入っているサーバーにアクセスしていたということです。
“不適切な投稿”を監視している業務委託の会社は、一日で約9万件の書き込みなどを監視していました。

またその事故の数週間後、メッセージを送受信できない等の障害も発生しました。
「国内データセンター提供事業会社において、本来電源停止を伴わずに電源設備のメンテナンス作業を行うべきところ、同社の誤作業により複数のネットワークやサーバー機器の電源断が発生し---」と報告されています。
外部事業者の誤作業に起因した事故でした。

この記事に関連して、今回のLINEにおける事故とはその内容は少し異なるのですが、「企業の中核部分を下請けに出すことによるリスク」という課題を思い浮かべました。

樋口晴彦氏文献「組織の失敗学」(中災防新書:約10年前の出版)に下記の記事があります。
(一部をピックアップ)


航空業界は、燃料価格の高騰と経済不況による需要減少のダブルパンチを受けて経営が相当に厳しい。
企業の存続が最優先とされる以上、コスト削減になりふり構っていられない事情は理解できる。
だだし、安全確保の要である整備業務だけはしっかりやってもらいたいものだ。
最近の傾向として特に気がかりなのは、機体のメンテナンスの上で最も重要とされるC整備(約六千飛行時間ごとに実施されるドッグ整備)を中心に、整備業務の約四割を海外の整備業者にアウトソーシングしていることだ。


今回のLINE事件も中核安全管理業務の子会社への委託の問題となるのでしょうか。
同書の引用を続けます


「安全はタダでは買えません。我が社は安全確保のためにメンテナンスに十分な経費をかけているので、航空運賃を他社よりも高く設定しています」「当社の航空機は、国内整備率が○○%に達しています。ご家族のために安全を何よりも大切と考えるお客様は当社をご利用ください」とアピールすればよい。
つまり、整備部門をコストと考えるのではなく、航空業界の中で自らを差別化するための「武器」として利用するのである。

顧客に対して安全を真剣に訴える航空会社が出てくることを期待したいものだ。


樋口先生も指摘されているように、セキュリティーへの取組みの真剣度をアピールできる社会状況になっていると思います。
情報関連分野の企業に限らず、組織の安全管理への取組みはその選定評価のポイントとなって久しいのですが、その真剣度を問われているということでしょうか。
本当の真剣度(本音の部分)を表して欲しいと思います。

樋口先生の言われるように、厳しい状況下にあるからこそ「安全」「メンテナンス」を武器に再構築を図るという戦略もあるのではと思います。
コロナ禍の追い打ちも加わって、今まで以上に経営環境が厳しい社会情勢ですが、事業の基本の部分は失わずにいてほしいという消費者サイドの願いでもあります。