2023年2月23日のNHK番組「失敗の法則 雪印 2つの事件」
2つの事件によるグループの解体という事態
その後、雪印の社員は再建への途を模索していきました。
- 有志で『雪印体質』を変革する会を立ち上げる
・自分たちの論理ではなく、「お客様・生産者へ向き合うこと」が変革につながる--
--それは創業の精神であった!
・感謝が欠如していた等々の懺悔に近い覚悟を全国紙で表明
--生産者からの厳しい言葉を受ける等々 - 信頼回復プロジェクトへと発展
事件を自分のこととして捉えて、考えて変わるという自主的な行動へ。
・生産者との対話の進め
・お客様モニター制度の設置
・工場開放デーの設定
<具体的対策>
- 生産者や消費者から遠くなっていた
⇒生産者や消費者と向き合った - 外部の目を入れる
・社外取締役の導入
--社会取締役による改革(社外取締役に人財を得た)
・社外取締役の立場の明確化 - 企業倫理委員会の設置
・従業員一人ひとりの意識改革
・現場めぐり(工場めぐり)
--意識改革ができていない
--外部の知恵で改革案を作っていた(形だけ作っていた)
→自分たちの手で行動規範を作る(意見の合意の調整に時間をかける)
⇒『雪印乳業行動基準』の作成 - 事件を風化させない活動「事件を風化させない日」(20年間続けてきた)
・6月27日(食中毒事件)
・1月23日(牛肉偽装事件) - 歴史館において事件を記録した資料の展示
<識者の意見>としては以下のような指摘が挙げられています
- 対外的にコミットメントを出すという効果
- 自発的有志の存在
--やらされ感ではない
--有志の活動を認めるという経営の判断もあった - 社外取締役の存在(形式的でなく、経営陣にとって聞きたくないことを言う人の存在)
--報酬をもらって専業としている人も出てきているが、このような人は会社に不利なことを言い難い面があるが、そのような存在ではなかった。 - 雪印は失敗から学んでいこうという姿勢を見せてくれている
以上の雪印メグミルクの真摯な姿は、精神面における倫理道徳性の深めという意味においても参考となります。
失敗の原因を深く反省し詰めていけば、対応の途も自ずと見えてくるのかもしれません。
「自己の失敗を反省する」というだけに留まらず、このような貴重な事例を参考とさせていただいて「自己に反省してみる」ということも大切かと思います。
当筆としては識者の下記の意見が特に心に残っています
- 「創業の理念を現代化して考える必要がある!」
企業だけでなくいろいろな団体においてもその存続の要点になる言葉だと思います。
創業当初の言葉をそのまま引用していては、その当時の時代的な背景等もあり、現代の人の心にはひびかない面が出てくるかもしれません。 - 「悪い企業風土は“形状記憶合金”のようなもの」
労働災害発生の当初における各企業の対応も、時間経過とともに薄れていき、元に戻ってしまいます。
災害発生時の強い安全対応決意も、風化していきます。 - 「失敗(小さな失敗)の効用」
大きな失敗はリスクアセスメントの実施により避け、小さな失敗は貴重な財産(知恵)となし得るということ。
そのような導きのできるリーダーは貴重な存在だと思います。
この雪印事件については、多くの調査がなされ、多くの文献も出されているようです。
“不祥事の伝承”について、「不祥事に関する情報を社会的財産とする」として、樋口晴彦氏が下記のように書かれています。
「企業という閉鎖社会の中で伝承しようとするから途絶えてしまうのである。そこで筆者(樋口氏)は不祥事に関する報告書を公刊物に掲載することをお勧めしている。」
「中略」
現実には、「我が社の恥ずかしいところを他人に見せたくない」「世間には早く不祥事のことを忘れてもらいたい」と考えている経営者が少なくないだろう。
しかし、そのような発想は、失敗経験の伝承=不祥事の再発防止よりも、会社のメンツの方を重んじているということだ。
突き詰めてみると『不祥事の再発防止は何事にも優先される』との意識を経営者自身が持てるかどうか、すべてはその一事にかかっているのである。」
from 樋口晴彦著「組織の失敗学」(中災防新書)
自社の不祥事とその後の対応について公表された雪印メグミルクは、創業の理念を基に、エクセレントカンパニーへと歩を進めておられると推察します。