不幸な事件を契機として、「宗教2世問題」が浮き上がってきました。
「親の宗教の子への押しつけ」の問題ですが、引いては広く「親の信条・価値観の押しつけ」ということへもつながりそうな問題です。
親は自分が苦労してたどり着いたであろう信条・価値観を子供に伝えたいというのはごく自然な心情だと思いますが、それが過激な様相を呈して問題となっています。
報道では
<東京新聞>2022年11月2日 06時00分
宗教2世の73%「親や教団から安全に離れる制度」を希望 荻上チキさんら調査 脅迫、暴力も…どう防ぐ?
Aなどの信者の元に生まれた子ども「宗教2世」の実態を調べるため、評論家荻上チキさんが所長の「社会調査支援機構チキラボ」(東京)がインターネットによるアンケートを実施し、1日、結果を発表した。当事者に必要な支援について、回答者1131人のうち73%が「子どもでも親や教団から安全に離れられる制度の整備」を希望。信仰が強制される宗教的虐待と脱会への強い引き留めがある実態が浮かんだ。
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アンケートは9月9〜19日、回答者が調査を他の人に紹介することを繰り返す形で行われた。
回答者のうち親と回答者が入信していた宗教団体の上位3団体は、Bが428人、Cが168人、Aが47人の順だった。
結果によると、5割以上が脱会や脱会希望者に、何かしらの支援が必要と回答した。
宗教団体によっては進学が制限されていることがあるため、「学び直しや学歴取得のための教育的支援」の希望が55.8%あった。
脱会した回答者の58.3%が「家族との関係が悪化した」。
また22.4%が「家族から脅迫・非難・暴力を受けた」という。
また「信仰を理由に家族から恋愛や交友関係を制限された」という人が、BとAの回答者で8割以上いた。
Bの回答者は8割以上が家族から体罰を経験していた。
(安倍晋三)元首相の銃撃事件以降、宗教2世が虐待や人権侵害の実情を訴えるようになった。
荻上さんは都内で記者会見し、「宗教2世の問題は特殊ではなく、多くの当事者で共有されている。宗教的虐待を前提に福祉ネットワークの再構築が必要だ」と指摘した。
詳しい調査結果はチキラボのウェブサイトに掲載している。(小川慎一)
<NHK>2022年11月1日 19時29分
宗教2世調査 34%が教団への献金を家族から求められたと回答
宗教の信者の子ども、いわゆる宗教2世について、Aを含むさまざまな宗教を対象にアンケート調査を行ったところ、3人に1人が家族から教団への献金を求められたと回答したことが分かりました。
この調査は、社会問題を調査する団体が、ことし9月にインターネットを通じてアンケートを行ったもので、仏教系、キリスト教系、神道系などさまざまな宗教の2世、1,131人が回答しました。
この中で家族から求められたこととして複数回答で聞いたところ、「儀式などへの出席」が90%、「関連団体への所属」が40%となりました。
さらに「教団への献金」と答えた人は、34%と3人に1人に上りました。
また、家族から言われたこととして「教義に反してはいけない」が63%、「信心のおかげで成功した」が同じく63%となったほか、「学校行事への参加の禁止」が30%などとなっています。
脱会した人が困ったこととして「家族関係が悪化した」が58%と最も多く「新しい世界観や社会常識などを作り出すことが難しかった」が45%などとなっています。
社会に求める支援については「親や教団から安全に離れられる制度の整備」が73%と最も多く「社会問題を起こした宗教団体への解散命令や法人格の取り消し」が72%などとなっています。
調査を行った団体の代表の荻上チキさんは「今、声を上げている宗教2世の主張は特殊事例ではないことが明らかになった。信仰を子どもに継がせる自由もあるが、子どもの意思を奪って押しつけるのは虐待だという線引きを社会で設け、信仰からの離脱などに介入できる制度が必要だ」と話していました。
宗教2世の女性 “親や教団から離れること難しい”
宗教2世の都内に住む40代の女性は「親から離れたいと思っても外に頼る人もおらず、行政も冷たい対応だった」と話し、親や教団から離れることの難しさを語っています。
女性は両親がAの信者だと明かしたうえで、「両親が親族を勧誘したり、霊感商法で物を買わせたりしていたので親族とは疎遠になっていた。親や教団から離れて部屋を借りようとしても、保証人になってくれる人もいなかった。宗教2世は、外に頼れる人も生活できる基盤もない」と話していました。
通っていた学校や区役所に相談したこともあったということですが、当時の対応について「学校も区役所も『信教の自由があって関われない』と言って助けてくれなかった。後ろ盾のない宗教2世には非常に冷たい」と話していました。
成人になって脱会した直後、両親からは、「親子の情は切れない。2世の脱会は絶対許されない。地獄の底に行くあなたを見るのは忍びない」などと書かれた大量のメールが届いたということです。
行政に期待することについて「国は警察や児童相談所、民間などと連携して宗教2世の救済のために本気で取り組んでほしい」と求めていました。
「信教の自由」という原則によって、子供の「信教の自由」が奪われているということのようです。
子供は幼く、十分な思考の基盤も持っていないため、親が導いてやらねばならないという親心で、子供を指導します。
それはあたりまえのことであり、自然なことのように思えますが、一方でこのような問題も起きています。
『親の価値観の押しつけが子どもの負担になる。“いい人”のやり過ぎが問題』とは広く言われることですが、生活・経済における環境も含めて、子供にとって親の存在は絶対的な側面もあります。
「親には安心を与えるのが道徳ですよ」と親孝行の美徳も教えられています。
厳しい教義ほど人を引き込むという面もあるのでしょうが、宗教側の教義・指導内容にも問題があるのではと思えたりもします。
人とのつながりの中で、人のためになる行為(或いはそのようにする動機)は、尊いと思いますが、それは見返りの無い(求めない)もの、(受けた側の負担感のないもの)であることを望みます。
子にとって本当に良い教え(導き)であれば、不満(疑念)の時期はあっても、その時期を乗り越えて(人生経験の深めによって、また親の後ろ姿を見て)、同意同調するときが来るということもあると思います。
この親の待つ姿勢もまた大切かと思います。
そして、自他共に精神性を高めていくことができるのが理想と思うのですが---
【変更点に注意!】
設計において、前例を流用するという設計手法(流用設計)があります。
それは有効な合理的方法でありますが、その設計のベースとなっている条件等の差異点(変更点)を見落とさないようにとの、貴重な失敗経験に基づく戒めがあります。
前例をそのまま流用したことによる災害・事故の事例も多く言われています。
--親の気持ちは良く分かりますが、自分の経験等を元にした考えそのままの流用思考(流用設計)にはなっていないか?
という親自身の自己への反省も必要かと思われます