災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの人命尊重を第一」としつつも、被災後の“生活の場”の確保を考慮しておく必要があります。
各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「如何に事業を継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方法が示されています。
この指針に示される内容は、私たちの“生活の場”における被災対応としても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の場”という視点で、この指針の内容の検討をしてみたいと思います。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”というようなものです。)
前号に続いて、私たちの生活環境における具体的なリスクは? ということで、
「“検討の対象とするリスク”の選定」について考えてみたいと思います。
<c.f.>『③BCPの対象とするリスクの選定』
洗い出したリスクより、BCPの対象とするリスクを絞り込んでいきます。
「中⼩企業庁BCP策定運⽤指針」に各災害等のリスクの重み付け(見積り)が例示されています。
取り上げるリスクは、各企業の置かれた地理的状況等により異なってきます。
各企業がリスクの評価をする際のポイント例が「ガイドブック」に示されています。
- 歴史的な視点(過去災害)
- 地理的な視点(断層、川、土砂崩れ)
- 物理的な視点(建物の耐震基準、地形:地盤の高低、燃えやすい物)
- 環境的な視点(近年の気象状況、社会状況、周辺地域の状況等)
『防災とは、地域を知って、その地に生きること』と言われます。
参考となる検討項目も挙げられています
【復旧費用の算定に影響する各種項目の検討】
復旧費用を算定するにあたって、色々な要素が影響してきます。
(リスクの評価において、特に参考となるのは1~4)
- 立地場所
貴方の工場の所在地・地質・地盤・高さ・最寄りの海又は河川からの津波・洪水の危険度、近隣の状況(類焼の危険の有無)等で費用が左右されます。 - 自然災害に関する過去のデータ
貴方の工場所在地の、過去の地震・津波・台風(風速、降雨量)・竜巻・洪水・土砂災害・雷雨・火山噴火・異常高温・異常低温・大雪等。
各地気象台にデータがあります。 - 防災対策状況
消防水利・消火能力・建物、機械、装置、構築物等の防災対策の実施状況・電力、ガス、水道の災害時対策(自家用設備の準備)・コンピュータの災害時対策・業種による火災、爆発の危険度等により復旧費用が変化します。 - 事業中断
ボトルネック・原料供給途絶の危険度・役員、従業員の危険度・最大予想損害額〔発生しうると想定される1事故・1構内における最大損害額〕・中核事業・その他事業ごとの事業中断リスクの検討等。
これらの項目については、損害保険会社・専門のコンサルタント会社等に評価を依頼する(含む有料)ことも考慮すべきです。 - 建物の復旧
復旧に当たっては、構造・面積等を変更するのか。
速やかな再建は可能か等で費用が左右されます。
(建設業者との関係如何によっては、事業中断期間に影響する) - 設備の復旧
設備は、新式の設備に変更するのか。
速やかな調達は可能か等で費用が左右されます。
(機械製造業者との関係如何によっては、事業中断期間に影響する。) - 複数部門・複数事業所の復旧対策・代替生産の検討等
他地区の事業所に生産を委託する場合の委託に関する諸費用等です。 - 復旧費用に加えるべきもの
設備の復旧費用+事業中断費用+毀損した在庫調達の他、工具・器具・備品・車両運搬具・コンピュータなどの再調達費用も考慮すべきです。
これらの事項を各企業で検討し、各企業における「リスクの見積りと評価」をして、BCPの対象として取り上げるリスクを選定していくことになります。
★BCPの対象として取り上げるリスク以外のリスクについても、上記で検討した結果は「BCPリスク評価表」として、経営トップの机上に置いて、常時検討の対象として活用すべきと考えます。
以上において、「中⼩企業庁BCP策定運⽤指針」のリスクの位置付け図が示されています。
各自の状況により、各災害等については、いろいろな見方があると思いますが、“頻度”と“災害の影響度”という指標での各災害のリスクの状況の把握例として参考にできます。
また、「リスクを評価する際の検討項目」も参考になります。
具体的には、「復旧費用の算定(例)」における「1」「2」「3」「5」が参考になると思います。
では、具体的にどの災害を検討の対象にするのかということですが、個々の検討結果にもよりますが、一般的には「地震」「風水害(台風・豪雨)」「火災」が挙げられると考えます。
もちろん、これ以外の災害についても常時念頭に置いておくべきですが、まずこの3災害について検討を深めていくことになると推察されます。