災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び怪我をしないこと」への努力傾注は最優先事項ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討をしておく必要があります。
各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。
この指針に示されている内容は、「被災後の私たちの“生活”」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあると思われます。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)
前号は、「なぜFCPの作成が必要なのか」「FCPの目的の明確化」について、原点に返っての整理してみました。
今回から、具体的な「事前対策」について順次検討していきたいと思います。
なお、 BCPの項目には「重要サービス商品の検討」という項目がありますが、 FCPにおいては、今まで挙げてきた下記のような項目が該当すると考えます。
・家族の命、そして関係する人達の命の安全を図る
・被災後の家の運営維持を考える(家族の財産を守る)
・周囲の人達への配慮についても考える
当ブログ姉妹サイトのBCP記事(下記)より一部を引用します。
<c.f.>『事前対策の手順一般①』
被災後の「時間経過」と「実施すべき対応」として、一般的に下記が想定されます。
①身の安全の確保・避難
②状況の把握・被害拡大の防止
③被害状況の確認
④対策の実施
BCPでは、被災後の時間経過の各段階において、「どのような事前対策が必要になるか」を見出し、被害の軽減・事業再開に向けての事前対策を検討し、実施に移していくことになります。
事業継続の対策準備をしていないということは、事業に関わるさまざまなステークホルダーからの信頼を欠くことになります。
信頼を欠く事象として、一般的に下記のような項目が挙げられています。
・製品・サービスの提供停止で顧客を失う
・法定業務等の遂行が困難
・給与の支払い困難
・関係部署への支払いができない
・業績の悪化で融資を受けられない
・企業価値の低下
・地域社会の期待に応えられない
・---
家族間での話し合い等における事前検討において、各災害についての対応策を検討するわけですが、その場合被災直後からの時間経過を考慮して、各段階における対策を想定してみるという提案となります。
時間経過という要素を入れて検討していきます。
多くの場合、被災直後のことがまず思いつきますが、その後数日間、数週間後の状況も想定してみるということです。
そして、これには災害に遭われた人達のアドバイス等が非常に有効です。
『地震イツモノート(ポプラ文庫)』より主要項目をピックアップしてみます。
※この本には、阪神・淡路大震災の被災者の皆さんの“気持ち”と“それぞれの工夫”がまとめられています。
【Ⅰ】地震が起きた瞬間
・地震の瞬間は何もできない!
・建物が倒壊したらどんな防災グッズも役に立たない!
【Ⅱ】地震直後
・とても静かだった!
・ライフラインが止まる。
それは原始生活以下になるということです。
・ライフラインが止まっているとき、生き残りの鍵は、知恵です。
【Ⅲ】救援活動
・本当は横にいてほしかったけど、言えなかった。
・被災者は30万人以上。
1万人の救助隊だけではできないことがあります。
・隣の人と挨拶している。
それが大きな防災でした。
・ヘリコプターの音で声が聞こえなかった。
・人の心がありがたくもあり、怖くもあり。
コミュニケーションが鍵になります。
【Ⅳ】避難生活
・「情けない!やめてよ!」と叫んで泣いた。
取り合いをしていた人達も我に返り、泣いた。
・非日常が日常に変わっていく、避難所の共同生活。
・地震は約10秒。
避難所が消えたのは、5年後でした。
現実味を持って迫ってきます。
「防災が、地震のための特別な努力ではなく、私たちのライフスタイルも中に自然に横たわるものであって欲しい」というのは、この本の編者の言葉です。
FCPもその一環として、日常に溶け込むものとして捉えることが大切と思います。