「FCP:建物内の設備・備品の固定等」<13>

災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び負傷しないこと」は最優先ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討しておく必要があります。

各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。

この指針に示されている内容は、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)

前号は、「事前対策」における「建物の耐震性」についてでした。
今回も事前対策においての「建物内の安全対策」として「設備・備品の固定等」に移ることにします。
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当ブログ姉妹サイトのBCP記事(下記)より一部を引用します。
<c.f.>『機器・設備の固定等』


転倒防止等の機器・設備の固定等は災害防止上欠かすことのできない対策です。

設備管理・施設管理の重要業務と位置付けて、以下のような防止対策を充実させていく必要があります。

*重要業務と重要設備に対する耐震対策の実施
*生産設備の特性を考慮した耐震対策の実施
*設備巡回点検時においても、この視点で機器・設備の状況を再確認
 ⇒機器・設備に関するリスクアセスメントの実施!
*重量物等(重量物等の低いところへの保管)
*危険設備等
*設備機器等の固定状況
*整理整頓の実施(不要な物の廃棄等)
*簡単に防止対策ができない場合は、その危険性の関係者への周知

※設備管理・施設管理業務として当然に詰めておくべきこと
--業務の一環として充実させていく必要があります(業務ノウハウ化)


建物における安全性は建物自体が安全であればそれだけで満たされるというようものではありません。
災害時の安全な避難経路、防災備品等の有効性、設備・機器の転倒防止、壁の剥落防止等にも目を向ける必要があります。
先ずは、地震等災害時における、設備機器・備品等の挙動状況を想定する必要があります。

地震家具転倒怪我

参考とさせていただいている阪神淡路大震災の教訓「地震イツモノート」に『家具等の倒壊の模様』が記されています。

『家具は倒れる』
--家具はまさしく凶器です。
--重いタンス、食器棚、本箱、ありとあらゆるものが、私たちに襲いかかり、命さえ奪います。

『ガラスは割れる』
--ガラスが砕けて飛び散って怪我をします。

『照明は落ちる』
--ぶら下がった照明器具が落ちて、怪我をします。

『インテリアは飛ぶ』
--インテリアは猛スピードで飛んできます。

それらへの対策として、多くの書物に下記のような数多く提案・知恵が示されています。

<家具全般について>
  • 家具の配置を考える(位置を変える)
    • 寝ているとき、大きなタンスや本棚が倒れてきても安全なように移動する。
    • 家具で出入口をふさがれないような位置とする。
    • 家具が倒れてきても、下部に空間ができるようにしておく
      --背の低い家具等を使用して空間を確保する
    • 家具は一列に並べる
      --倒れても重なり合わないので、起こすことができる
  • 家具を倒れないようにしておく
    • 家具の前面下敷きをして、少し後方へ傾けておく
      --くさび状のストッパー式敷き物
      (地震による家具の揺れは後方へ動き、前に倒れる度合いが減る)
    • 背の高い家具には、天井まで「(後方に)つっかい棒:ポール式」をする
      --発泡スチロール、空き箱等でも可
      --天井が弱い場合は、奥の壁際に板を挟む
    • L字金具、チェーン式器具等を使用して固定しておく
      --重く大きな物は、複数の固定器具を併用する。
    • 重い物は下部、軽い物は上部に置く
  • タンスの引き出しも飛び出してくる可能性がある
    • 途中で止まるものにしておく
  • 家具自体を置かないようにする
    • 別の場所にまとめて置く等する
    • 家具の数を減らしておく
      --物が減るとリスクも減る:環境整備となる
  • 危険性の少ない家具の選定を考慮する
<食器棚について>
  • 割れによって中の食器が飛び出る危険性がある
    • 扉にストッパーをつけ、飛び出ないようにしておく。
      (ストッパーは多種市販されている)
<本棚について>
  • 本棚の転倒、本の飛び出しに注意
    • 重い本は低くまとめる等重心を低く収納し、上部の固定を考慮する
    • ストッパーをつけ、飛び出ないようにしておく。
      --本棚の全面に引っ掛かり等をしておく
<ガラスについて>
  • 割れて散らばったガラスはとても危険
    (ガラス製品は割れないようにしておくことが大切。)
    (夜間、停電など暗闇のなかでは怪我をしたり、避難が遅くなってしまう。)
    • 飛散防止フィルムを貼る(両面に貼るとより効果的)。
    • 代用としてアクリルの使用を考える。
    • カーテンがあると割れたガラスの飛散を相当防ぐことができる。
    • 落ちて割れそうなガラス製の物は低い位置に置くようにする。
<照明器具等について>
  • 照明器具等天井に取り付けられた器具は落下し頭部等に怪我の危険
    (特に吊り下げられた照明器具等は大きく揺れ危険度が増す。)
    • 寝ているときの照明器具の位置についても考慮する。
<電化製品について>
  • テレビ、冷蔵庫、レンジ等の転倒、移動による危険
    (上記家具と同じような対応が必要となり、防災用具で固定したり、滑らないようにしておく)
<インテリア等について>
  • 高所に設置の重量物、鋭利な物の落下危険
    (落下防止の措置をしておく必要がある。)

以上、いろいろと教えられる点がありますが、これら以外にも個々の状況に応じて措置しておく必要があります。
また、これらの対策は、屋内における避難経路(次回以降に考察)を想定しながら進めていくことも大切です。

レジリエンス『先ずは生き延びることへの柔軟対応』

★『釜石の軌跡 三原則』
 --鵜住居小学校の避難例
①想定にとらわれるな
②最善を尽くせ
③率先し、避難せよ


★『想定外に備える』
 --南三陸町立戸倉小学校元校長 麻生川敦氏講演より
  (東日本大震災時、子供たちの避難指揮をとった震災当時の校長)
①想定外が起こり得る覚悟をもつ。
②想定外の判断を行う目を持つ。
③臨機応変に対応する力を上げる。

(この拙いブログは、まだ災害について十分な実感を持てない筆者自身への「災害意識の駆り立て」でもあり、また「なかなか災害行動へと結びつかない焦り」でもありますが、何か皆様のFCPを考えるうえでのきっかけともなれば幸いに存じます。)