災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び負傷しないこと」は最優先ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討しておく必要があります。
各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。
この指針に示されている内容は、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)
前回は、「事前対策」における「復旧ストーリーの事前検討」についてでした。
今回は「緊急時の役割分担」について考えてみたいと思います。
「緊急時の役割分担」については、今までの事前対策において検討してきた内容を、誰がどのように負担していくかということになります。
BCPでは“緊急時の体制の整備”として「BCP対応体制の明確化」(下記)の記事を載せています。
BCP対応体制の明確化
緊急時の対応には「初動対応」「復旧のための活動」等々があり、そのための「意志決定」「指揮命令」等(誰が何をやるのか)の体制が必要となる。
経営トップ(発動者と代替者)
*統括責任者を決めておく(代理者も必要)
会社の対応に関する重要な意思決定及び指揮命令者
統括責任者の不在或いは被災ということもあり得るので、代理責任者を決めておく。
例:社長
代理:専務、工場長 ---
*発動基準の検討/明確化
(発動には、状況の把握、中核事業との関連も考慮)
*統括責任者が意志決定及び指揮命令すべき内容を事前検討しておく
・当日~(初動対応)
==避難 安否確認 お客様対応 初期消火 地域への対応 等々
・数日~(復旧に向けた対応)
==重要商品復旧 取引先との連絡調整 行政・団体への対応 対外情報発信 資金の確保 等々
人命救助、安否確認、状況把握
・各部門長
・各現場責任者
広報担当
・現場サイド、顧客サイドとの連絡
・自社の状況の広報
(リスクコミュニケーションの充実:オーナーサイド、現場等との連携/連絡について)
※行動チェックリストを用意しておく
※安全衛生管理体制との関連についても考慮する
法規制をバックにした労働安全衛生活動とBCM(Business Continuity Management)を関連付けて(場合によっては一体化して)展開していく。
<例>
法規上毎月実施することになっている安全衛生委員会において、年2回程度、BCP・BCMをメイン議題として検討を深めていく。
--中小企業においては、BCPにおける統括責任者と総括安全衛生管理者は重複するケースもあると考えられます。
(安全衛生委員会≒BCP委員会)
※既存の「防火管理組織」等の防災体制との整合化も考慮する。
この記事より次の内容が参考となります
被災後の対応&復旧ストーリーを考慮して、下記の各段階において、その対応事項を誰が受け持つのか?
当日~(初動対応)
:避難 安否確認 お客様対応 初期消火 地域への対応 等々
数日~(復旧に向けた対応)
:重要商品復旧 取引先との連絡調整 行政・団体への対応
対外情報発信 資金の確保 等々
家庭内では、FCPを家族で検討していく過程で、自然と役割分担は決まってくると思われますが、近隣との関係も認識しておく必要があります。
隣近所は「互近助(ごきんじょ)」という言葉があるそうです。
急病の場合でも、救急車の到着を待つまでの間の救急処置の大切さをいわれています。
災害時においても、「近助(きんじょ)」の相互援助が重要になります。
阪神・淡路大震災において、建物の下敷きなどで自力で脱出できないでいるとき、助けられた人の約77%は家族や隣近所の人によって助けられたといわれています。
いつも引用させていただいている「地震いつもノート」にも下記のような記事があります。
助け合うこと、声をかけ合うこと、隣に住む人がどんな人でどんな事情を抱えているかを知っていること。
そうしたことこそが、どんな知識よりも、備蓄よりも、大きな力になったのです。
--お隣さんに助けてもらった
--近所の若者が声をかけてくれた
--励まし合えた
--遠くまで助けを呼んでくれた
--誰がいないのかすぐに分かった
・・・
今さら言うまでもありませんが、「隣近所の大切さ」は常に認識しておく必要があると思います。
<「オープンチャットの活用」事例>
建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン(令和2年6月)
国土交通省住宅局建築指導課
経済産業省産業保安グループ電力安全課
にオープンチャットの活用事例が紹介されています
事例20 パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー
神奈川県川崎市にある分譲マンション。
令和元年東日本台風による大雨の影響で建物地下の電気室が浸水し、全棟停電する被害が発生した。
被災当時、物資の共有や設備の設置状況、住民ボランティアの募集などに関する情報共有について、
紙の張り出しのほか、SNS で居住者専用のオープンチャット(約890 名参加)を作成して対応した。
当該マンションの管理組合では、令和元年東日本台風由来の課題対応のために理事会諮問機関「SFT1013 対応タスクフォース」を設立して対応にあたったが、このメンバーを募集する際にもオープンチャットを活用した。
(この拙いブログは、まだ災害について十分な実感を持てない筆者自身への「災害意識の駆り立て」でもあり、また「なかなか災害行動へと結びつかない焦り」でもありますが、何か皆様のFCPを考えるうえでのきっかけともなれば幸いに存じます。)