経営において、その存続を考えるなら利益確保(重視)は当たり前、しかし安全を軽視していてはーーー、特に “安全に関係の深い業種” においては---
また、自分も犯している(犯す可能性がある)かもしれないリスクのマネジメントミス。
--潜在しているリスクについて、認識しコントロールしているつもりが甘くなる!
「魚の釜中(ふちゅう)に遊ぶが如し」という自戒の教訓もあるそうですが---
北海道知床観光船事故
利益に走り安全管理を軽視した経営(安全重視の価値基準が甘かった?)による大事故への展開。
そして結局は経営をダメにしてしまった(大損害を被った)という典型的なケースがまた起きました。
事故は4月23日に発生し、乗客乗員26人が乗っていて、14名の死亡確認、12名が行方不明という惨状。(5月3日時点)
新聞記事を1日分見ただけでも、会社の経営観が推察されます。
- 遭難した船(カズワン)は昨年5月と6月にも事故を起こしていた
- 4月21日に海上保安庁の定期安全点検検査において「船体に亀裂の指摘はされなかった」とK社長は主張。
この検査時に、衛星利用測位システム(GPS)を利用して船の位置情報や水深をモニターに表示する「GPSプロッター」と呼ばれる機器が取り外されていた。
安全のため23日の運航開始までに搭載するように求められていた。
--K社長は認識していたが、放置していた - 会社は1~2年前に退職が続出していた。
同社は6年前に経営権が現社長に移って以降、経験豊富な船長や従業員を次々解雇。
7人いた従業員が最近は数人にまで減っていたと証言する人もいる。
少数者に負担が集中し「かなり参っていた」(地元観光業者)
T船長と甲板員を助けるため、周囲がボランティアで手伝うほどだった。
T船長は2020年から勤務していたが、人手が足りず、もう1隻の運航も実質任されていたらしい。
--人命を預かる業務で、経験年数が浅い責任者(T船長)、人手不足の状況によるオーバーロード! - 周囲の漁師の判断は「(事故当日は)カズワンが走れる状況ではなかった」とのこと
そして、それを船長にも伝えていたとのこと - K社長は知床で複数のホテルや 旅館を経営し、除雪などを従業員に手伝わせていた。
「みんな嫌気が差していた」(元従業員)という。 - 同業他社の男性船長は「ベテランを切り、賃金が安い新人を入れることでコストを削減していた。『ベテランは残すべきだ』との意見も聞き入れなかった」と打ち明ける。
甲板員は事故のあった23日が初めての客を乗せる船上勤務だった。 - 同社は他社に先駆けツアーを開始しており、大型連休前に集客を狙った可能性がある。
ただこの時期は風や波が強く、出港判断や操船には豊富な経験が求められる。
T船長は水陸両用車の運転手だったという。
知人の男性漁師は「湖のようなところで働いていたと聞いたが、ここでは素人みたいなものだ」と指摘。
またT船長は昨年6月に座礁事故を起こし、書類送検されていた。 - 「午後からしけるぞ」「 気をつけろ」
事故当日、周囲から忠告を受けていたT船長。
同社の元甲板員の男性は「K社長は海や船のことが分からない。悪天候でも売り上げのために『船を出せ』と指示し『他の船が出ているのに、なぜうちは出さない』とこぼしていた」と証言する。
T船長は「行けと言われるから行くんだ」と漏らすこともあったという。
もうこれだけで十分察しがつきます。
- 「現場に出ているときは船長の判断」でも、その判断に影響を与えるのは経営者。
- 社長会見の中で
「お客様から少しでも出港して欲しいという要望が普段からすごくある。
なので、一旦出港して(荒れた)波の揺れを体感してもらい、もう帰りたいと納得してもらう方法を取っていた」
--真っ当な理由付けのようであるが、これはお客さんを危険判断のセンサーにしていたということ!
運航会社の安全判断をお客に負わせていたということ! - 社長は安全を統括管理する立場にあるということは、一般においても結構自覚されていない面もあるのではないかと思われます。
経営者はどのような情報をもとに、どのような基準で安全を判断しているか? ということです。
--部下任せ、管理者任せになっていて、安全上の問題があると部下は叱る。
では社長自身は? ということです。 - 改善指示に従わず、安全管理規程違反の運航を続けた。
昨年の北海道運輸局の改善策が実施されているかの抜き打ち確認で、K社長は「安全があっての商売」「安全運航に努める」と話していたとのこと。
--聞き取りや文書のチェックでは運航実態を見抜けない?!
→今後船舶検査の厳格化へ向かうとのことですが
当然に、営業停止処分の問題が出てきていますが、加えてその後の損害賠償の問題等々が続くと考えられます。
事前の「安全への配慮と少額の設備投資の欠如」が大きなツケとなって返って来ます。
加えて、正規に経営していた同業者にもは大迷惑をかけることになります。
--ゴールデンウィークを前にキャンセルが相次いだとのこと。
「安全第一」 そんなこと解ってる しかし、徹底・継続できない!
--安全軽視上の事故は確率的に発生します(リスクは確率の要素も加味して判断されます)
「組織の持つ安全に対する文化の水準が低ければ、その組織の危険事象の発生確率が高くなる」とは言われて久しいことです。
この組織文化の起点は社長の経営基準にあります。
--相当の自覚とそれによる継続努力が必要ということになります。
○今回の事故で指摘された事項の一つに「安全管理規程」が遵守されていなかったことがあります。
--K社長が運航管理者としての要件を満たしていなかった等
そして同時に、以下のようなことに思いが至ります。
○電気設備管理における保安規程
電気事業法に、事業用電気工作物を設置する者は、事業場又は設備ごとに電気工作物の工事・維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を策定し、遵守しなければならない。
--自己で定め、監督官庁に届け出して、それを遵守するという自己管理の規定です。
電気設備を管理する電気主任技術者の日常の管理の拠り所となるものです。
==自主管理規定ですので、日常の管理の中で、運用主体によってはその遵守が疎かにされる傾向も出る?ということへの教訓として受け取れます。
○また、労働安全衛生においては、安全衛生管理規程もあります。
--法的にははっきりとした作成の義務づけはないようですが、その中で労働安全衛生法で定められている総括安全衛生管理者、安全衛生推進者等々の役割を明記することが例示されており、作成すれば就業規則に準じて労働基準監督署に届けることになります。
==そして、管理規程の作成の有無にかかわらず、安全衛生管理体制における法規に基づく総括安全衛生管理者等にはその管理責任が存在しています。
○同様に、身近な例では、防火管理者の選任があります。
--防火管理者が名義だけのものであるケース?
その業務は防火管理についての日常での細かな配慮の継続が必要なのですが、名義使用だけに終わっているようなケースもあるのではないか?
==その地位は、防火管理をコントロールできる立場の者が当たるべきというのがこの制度の趣旨であろうと思います。