実施対象(範囲)として選定した作業について、各作業ごとに「危険性又は有害性(危険源)を特定」していきます。
この危険性又は有害性の特定は重要なステップです。
特定に漏れがあれば、次のステップの「リスクの見積り」「リスクの評価」及び「リスク低減措置の実施」に結びつかないことになります。
危険性又は有害性の特定においては、リスクアセスメント指針通達による下記のような分類例が参考となります。
(この分類は、各事業場の特性を考慮して現場で使いやすい独自のものでも可能です。)
危険性又は有害性の分類の例
<危険性>
- 機械等による危険性
- 爆発性の物、発火性の物、引火性の物、腐食性の物等による危険性
「引火性の物」には、可燃性のガス、粉じん等が含まれ、「等」には、酸化性の物、硫酸等が含まれること。 - 電気、熱その他のエネルギーによる危険性
「その他のエネルギー」には、アーク等の光のエネルギー等が含まれること。 - 作業方法から生ずる危険性
「作業」には、掘削の業務における作業、採石の業務における作業、荷役の業務における作業、伐木の業務における作業、鉄骨の組立ての作業等が含まれること。 - 作業場所に係る危険性
「場所」には、墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所、足を滑らすおそれのある場所、つまずくおそれのある場所、採光や照明の影響による危険性のある場所、物体の落下するおそれのある場所等が含まれること。 - 作業行動等から生ずる危険性
- その他の危険性
「その他の危険性」には、他人の暴力、もらい事故による交通事故等の労働者以外の者の影響による危険性が含まれること。
<有害性>
- 原材料、ガス、蒸気、粉じん等による有害性
「等」には、酸素欠乏空気、病原体、排気、排液、残さい物が含まれること。 - 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による有害性
「等」には、赤外線、紫外線、レーザー光等の有害光線が含まれること。 - 作業行動等から生ずる有害性
「作業行動等」には、計器監視、精密工作、重量物取扱い等の重筋作業、作業姿勢、作業態様によって発生する腰痛、頸肩腕症候群等が含まれること。 - その他の有害性
作業標準、作業手順などを活用し、作業ステップごとに危険性又は有害性(ハザード)を特定していくと、漏れを少なく出来ます。
この場合、本作業だけでなく、準備作業、片づけ作業、修理、点検、異常時対応などの非定常作業も対象範囲に含める必要があります。
(非定常作業は災害が起こりやすい作業です)
また、特定に当たっては、やりづらい作業、疲労の蓄積状況など、危険性又は有害性の特定に関係する事項について、作業者の意見を十分聞く必要があります。
危険性又は有害性(危険源)の特定においては、労働災害に至る過程を「危険状態(危険源と人との関係において)」「危険事象(災害事象の想定)」「災害発生」という流れに分けて検討していくと危険性又は有害性を明確に捉えることができます。
①「~に、~と」 (危険性又は有害性を特定して) |
②「~が」 (関係する作業者が) |
③「~するとき、~するため」 (危険性又は有害性と作業者が接近する危険状態) |
④「~なので、~がないので」 (危険事象の発生の可能性について) |
⑤「(事故の型)+(体の部位)を~になる、~する」 (負傷又は疾病の状況等の災害の発生) |
例)段差のある廊下(階段等の危険源)を作業者が清掃するとき(危険状態)。 段差に気付かずに後進して(危険事象)、段差を踏み外し転倒し、足と手を骨折する(災害の発生)。 |