経営における“衛生的要因”について

ハーズバーグというアメリカの臨床心理学者がいます。
このハーズバーグが唱えた「動機づけ・衛生理論」によりますと、人間の欲求充足と動機づけとの間には次のような関係があるそうです。

この「衛生要因」に注意を向けてみたいと思います。
先ず思い当たるのが下記の箇所です。
「たとえそれが満たされたとしても、人間の積極的な動機づけにならない」
思い当たる点があります。
「あんないい環境の会社にいながらなんで辞めるの」
「こんないい条件なのになんでそんなことをするの」
というようなフレーズはよく聞きます。
つまり、人は積極的欲求(人としての基本的欲求や自己実現への欲求)に価値基準を置く傾向があるということです。
そして次ぎに気づくのが
「しかし、それが欠乏すると、職場における個人の病気、つまり無気力、欠勤、退職とか、組織や集団の病気、すなわちストライキや、組織的な怠業(サボタージュ)などが発生する。」という箇所です。
つまり「“安全衛生”に関する事項」はこの衛生要因に当たります。

また「時間管理のマトリックス」があります。

時間管理マトリクス

『第一領域の「重要かつ緊急事項」は一番に対応しなければならない事項で、通常は即対応します。
次ぎに実施するのは第三領域の「重要でないが緊急事項」になりがちであり、
第二領域の「緊急でないが重要事項」が抜け落ちる傾向にあるので注意しましょう』という時間管理の注意事項を示したものです。
企業の経営で考えてみると、衛生要因はこの第二領域に位置すると思います。
そして、企業運営において、この衛生要因をどう受けとめどのように展開するかは、経営トップの認識にかかっています。

イエローハットの創業者で掃除について「日本を美しくする会」を提唱されている鍵山秀三郎氏は「益はなくとも意味はある」ということを言われています。
【雑誌「道経塾No.89」】
これは中国の晏子の言葉だそうですが、この「意味はある」というのが、上記の「しかし、それが欠乏すると---」に当たります。

「見えないところが大切」ともよく言われますが、衛生要因の重要性を認識して経営に当たる人は少ないと思いますが、衛生要因は企業経営における「見えないが重要なポイント」だと考えます。