“危険予知” と “ストーリー”

以前読んだ文献で、記憶に残っている事故事例があります。
それは、不活性ガス消火設備の起動ボタンを、その機構を知らない人が非常ボタンと間違えて押し、その救助に向かった警備員が死亡したという事例です。
(全国ビルメンテナンス協会:事例に学ぶ労働災害防止第2巻)

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その事故は、地下1偕、地上9階の複合用途ビルの駐車場で起きました。
テナントの女性事務員が、夜遅く残業を終え通用口の通路を通って出たところ、忘れ物に気づき取りに戻り、再び外に出ようとして、通用口でなく立体駐車場のドアを開けターンテーブル室に入ってしまった。
ところがこのドアはオートロック式であったため、自動閉鎖され、部屋から出られなくなった!
(夜間、ビルの管理員は不在)

ターンテーブル室は照明がなく真っ暗。唯一、不活性ガス消火設備の起動ボタンだけが点灯していた。
そこで、非常ボタンと思ってそのボタンを押し、二酸化炭素が駐車場に噴出し、ターンテーブル室にも漏れ、意識を失った。

この二酸化炭素の噴出により、駐車場内の堆積塵が舞い上がり煙感知器を作動させた。
この火災警報を受けた機械警備会社の警備員が現場に急行。被災。
その後応援に向かった警備員も被災。

結果として、警備員2名が死亡。女性事務員は5日の入院加療となった。

意識を回復した女性事務員によると
「真っ暗な中に閉じ込められ、翌日は休みのため誰も来ない。何とかしようと考え、唯一点灯している起動ボタンを非常ボタンと思って押した。」
「このターンテーブル室を通る経路は近道で便利なため多くの人が利用していた。」
とのこと。

★医師は、この事務員が助かったのは、起動ボタンを押したときの警報音と警告放送に驚愕して失神し、その位置が隙間の大きいシャッター及びターンテーブルの近くであり、加えて失神による呼吸が浅い状態であったためと推測している。
★警備員2名が死亡した状況については詳しく記載されていないが、被災場所は一人はターンテーブル室、もう一人は管理室となっている。隙間から漏れ出した高濃度の二酸化炭素によるものである。
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この事例をみて、考えさせられました。
自分が関連していたビルとその配置構造が似ていたのです。
出入りも多いし、そのビルを利用する人たちの傾向も似ていました。
このような事故も起こり得るのか!
そこまで推定した事故防止対策はできたか?

事故災害というものは、起こった後の結果から考えれば、
あのような欠陥があったのか!
このようにしていれば防げたのに!
というように具体的に反省することができます。
結果からストーリーが見えてくるのです

事故災害が起こる前にそのストーリーを描くことは? 非常に困難です。
でも、いろいろな要因を考えることによって、その可能性をある程度まで深めておくことはできます。
このストーリーの深めがリスクアセスメント展開ということになります
そして、それをある対象事象について体系化でき得れば、それはリスクベースの管理ということになります。
どのように展開するか?! 今後の課題です。