今まで、経済アナリスト藤原直哉氏の企業文化論について記してきました。
どのような企業文化の組織に身を置くかということは、そこで働く人の人生に大きく影響します。
そして、その企業文化において決定的に大事な要素は「リーダーシップ」です。
藤原先生は、「建設的な文化をつくるために具体的にどうすればいいのか?」について、「建設的文化をつくるサイエンス」として、この“リーダーシップ論”についても言及されています
前号では、「“リーダーシップの技術体系”9項目」の付記事項として、「マネージャーとリーダーの違い」を記しました。
今回は、付記事項②「他人を教育・訓練する技術」についてですが、示唆に富んだ内容です。
2回に分けて記したいと思います。
ここまでのところで一人ひとりのリーダーシップ能力が必要だと説いてきたが、そもそも人間の能力とはどうやって決まるのだろうか。
実は個人の業績の善し悪しは、①職務能力、②やる気、③仕事内容の関数による方程式で決まる。
これらの要素はさまざまに組み合わさっている。
例えば、能力があってもやる気がなかったら、業績が上がらない。
あるいは、やる気はあるが、たまたま意に沿わない仕事に回されてしまうと、やはり業績が上がらない。
または、やる気と関心はあるが、その分野の能力がなくて、結局業績が上がらない、などのケースである。
職務能力、やる気、仕事内容のバランスが取れないと、業績が上がらない。
業績評価とはこの三者のバランスを取ることである。
特に仕事内容は本人の問題というよりも、むしろそこに配属したマネージメントの問題である。
人間のやる気と能力に関して、一般的に次のようにいわれている。
やる気もあって能力の高い人には、いちいち口出しせずに、とにかく仕事を「任せる」。
反対にやる気と能力のない人間には、作業内容を命令や伝達として強制的に「指示する」。
また、やる気はあるが能力のない人間には、具体的な手順やノウハウを手取り足取り「指導する」。
一番扱いにくいタイプだが、やる気はないが能力のある人間には、「一緒に仕事をする」「共感性を高める」のが有効である。
一緒に仕事をするというのは、仕事に手出しをせずに、指導ではなく気持ちの部分で仲間意識を持たせることである。
とはいうものの、実際にやる気を高める方法は、とても難しい。
例としては、福利厚生を豊かにするという方法があるが、これは一度手に入れると、あって当たり前のものになってしまい、それだけでやる気が高くなることはない。
やる気を高める最大のポイントは、本人に仕事の達成感を与えることである。
本人に仕事ができたという実感が得られると、やる気が高まる。
やる気もないし能力もない人には、逐一指示していい仕事を与え、達成感を体験させるしかない。
上司が、部下を教育する時のポイントは、
①仕事ができる、うまくいくという達成感を与える。
②いちいち指図するタイプか任せられるタイプか、相手によって、部下を見極める。
この二点に尽きる。
また部下も、上司に使われる際のルールを知っていると、「何も言わずに任せっぱなし」、あるいは「なにからなにまで、いちいち指図してうるさい」などと、愚痴をこぼさないで済む。
部下の“やる気”で困っておわれる上司の方は多いと思います。
示唆に富んだ内容で、漠然としていた面を整理して示してくれています。
「職務能力」「やる気」「仕事内容」の三要素を示してくれていますが、この点については他の人も文献等でいろいろと指摘されています。
- [人生・仕事の結果]=【考え方】×【熱意】×【能力】 (From稲盛和夫氏)
・考え方(最も大切! 360度指向可能である)
・熱意=努力(自分の意志で決めることが出来る)
・能力=技術/技能、知能や運動神経、健康など(資質) - [仕事の出来具合]=【考え方】×【能力×熱意】×【行動×速力】 (From古畑友三氏)
・能力=体験×知識=(過去の人生における体験)×(過去に耳・眼学問により得た知識)
・熱意=問題意識×やる気
・行動=思考(力)×決断(力)
それぞれ行動を実のあるモノにするには重要な要素です。
また、「やる気」に関連して「マンネリ化」という課題もよく挙がります。
法令で開催が決められている安全衛生委員会のような会議は、やること(月に1回開催)自体が目標となっているようなケースもあるかと思います。
藤原先生は「達成感」を与えることと言われていますが、安全衛生関係のテキストでも、マンネリ化を防ぐ方法として、「達成度を評価すること」の意味が指摘されています。
職場で実施している諸活動を通して出てきた問題点を整理・把握し、データを視覚に訴える形にまとめる。
視覚化できれば、自ずと評価も可能になる。
評価できない活動は、必ずマンネリ化を招く。
組織、グループの活性化のためには、諸活動を評価し、見直すべき事項があったら、見直し、改善を図る。