「欠品ペナルティ?」

Yahoo!ニュースを見ていますと
『⾷品ロスを⽣み出す「⽋品ペナルティ」は必要?
商売の原点を⼤切にするスーパーの事例』

という記事に遭遇しました。
書かれたのは、⾷品ロス問題専門家・博⼠(栄養学)・消費⽣活アドバイザーの井出留美さん。

当ブログの筆者はよくスーパーへ出かけるのですが「欠品ペナルティ」なるものがあるとは知りませんでした。
スーパーの陳列の裏にもこのような営業活動が熾烈に行われているという認識を深めた次第です。

8⽉6⽇は⼟⽤の丑の⽇。
全国のスーパーで、うな重のパックが棚にたくさん積まれる。
売り切れてしまわないよう、⼩売(スーパーなど)は多く仕⼊れるが、その際、メーカーが納品できないとどうなるか。
「⽋品ペナルティ(⽋品粗利補償⾦)」として罰⾦を⽀払わなければならない。
このため、多くのメーカーが商品を必要以上に多めに作らざるを得ず、⾷品ロスの⼀因となっている。
⽋品ペナルティとは、⾷品メーカーが、⼩売店から発注を受けた数量分、納品できなくなったりした場合、⼩売店に対して⽀払う補償⾦のことだ。
何らかの理由で製造が間に合わない、売れ⾏きが予想以上で在庫がなくなった場合などに適⽤される。
本来、売上を上げられるはずだったのに失わせたことに対する「罰⾦」である。
⼩売店側は「棚が⽋品だらけで、空いていると、⾒た目がよくないし、お客様は不便を感じてしまう」「買おうと思った商品がなければ、他の店に⾏ってしまう」と主張する。
⽋品して商品棚を空けてしまうと、メーカーは、そのスペースを競合メーカーにとられる恐れもある。
そこで、メーカーは、⽋品を起こすリスクを考慮し、実際に必要な数より多めに製造することになる。
これを、⽇本中の⾷品製造業が⾏うとどうなるか。
商品は余るのが必⾄だ。
過剰在庫を持つことになり、商品の回転が遅くなる。
賞味期限がどんどん近づいてきて、最後には廃棄することになる。
つまり「⾷品ロス」が発⽣する。

というのです。

小売業の立場に立ちますと、陳列に欠品が生じると本来は得られるべき利益が損なわれるため、食品メーカーに対して、その補償を科すという発想は分かります。
客の立場としても、商品が新鮮で、その量・種類が豊富である方を望みます。
しかし、食品メーカーは弱者の立場に立っているとのこと!
そして、結果としては食品ロスというムダが生じているとのこと!

そんな業界の中、欠品ペナルティを科していないある単店経営のスーパーが紹介されています。
以下続いて記事から引用させていただきます

『創業当初から欠品ペナルティとは無縁の、地域シェアNo.1スーパー』
福岡県柳川市にある株式会社スーパーまるまつ。
1967年、駄菓⼦屋として創業し、しばらくしてスーパーに転換した。
チェーン店はない。
柳川地区には⼤きなショッピングモールもオープンし、同業他社が8社以上ひしめくが、地域シェア20%を誇り、ナンバーワンだ。
社⻑の松岡尚志さんにお話をうかがった。
まるまつは、創業当初から⽋品ペナルティを取り⼊れていないという。
スーパーと卸売業者が密にコミュニケーションをとることで⽋品を減らし、それでも⽋品が出てしまったら「致し⽅ない」と考えている。
無理に⽋品を防ごうとすると、過剰在庫を抱えてしまい、どんどん古くなってしまうからだ。
尚志さんは⽋品防⽌ではなく、別のことに目を向けている。
どうしたらお客さんが喜ぶか、だ。
例えば、社⻑になった今も、朝4時起きで市場へ⾏く。
「⾃分が“美味しそう”“⾷べたい”と思うものを仕⼊れるため」だと⾔う。
「農産物は、旬のものが⼀番新鮮で、⼀番安くて、美味しい」。
その代わり、シケのときなど、⿂が市場に出ないとき、無理に買うことはしない。
シケなどの理由から、海で⿂が獲れないと、市場には、数⽇間、同じものがずっと置かれているときがある。
値段も⾼くなるが、⼤⼿⼩売の場合は、古かろうが⾼かろうが、商品を揃えることを優先して買っていくケースがあるという。
尚志社⻑は「それではお客さんが可哀想。⾼いし古いし美味しくない」と語る。
仕⼊れたい商品がなければ、棚が空いても構わない、というスタンスなのだ。
また、廃棄ロスを極⼒減らすことにも注⼒する。
「捨てるくらいなら売ったほうがいい」がモットーだ。
まるまつは、独⾃システムの「単品カレンダー」を取り⼊れている。
たとえば商品ごとに、売れた数や、売ったときの単価、天気や最⾼気温などの情報を30年以上前からデータ管理している。
これにより、ロス率は、他社の半分くらいだ。
いわゆる⽇持ちのしない「⽇配品」は、他社だと4%以上のロスが出ているが、まるまつでは、2017年6⽉現在は、2.5〜2.7%だという。
ロスをできる限り少なくし、莫⼤なコストがかかる紙のチラシをやめ、過剰在庫を持たないことで、その分、常連のお客さまであるポイントカード会員に、お⼿頃価格で、新鮮で、品質の良い美味しい⾷べ物を提供することができる。
尚志さんは、「⽗がよく⾔っていた。戦後、ものが⾷べられない時代があった。今がどれだけ贅沢か」と語る。
常に商品がびっしりと棚に並んでいることは、当たり前ではない、という意識が根付いている。
取材全体を通して感じたのは、「誰のために」がブレていない、ということだった。
常に、⾃分がお客さまの⽴場に⽴って、仕⼊れ、売り、関係性を築いていた。

大企業の効率重視・利益最優先とは一線を画した、このような独自性のある質の高い経営が注目を集める傾向にあることはいいことだと思います。
このような「独自性のある質の高い経営」は、経営者の人格に依るところが大だと思います。

 

※食品ロス管理者なる制度があるかどうか?
エネルギー管理の分野では、エネルギー管理士あるいはエネルギー管理員という制度があります。
一定量以上のエネルギーを消費する事業場にはその配置が義務づけられています。
また工場等施設の計画・設計段階においても、専門資格者の関与が推奨されています。
比べるのもどうかという面もありますし、業界を知らない者が何を言うのかと指摘されそうですが---

鳴門の双耳峰201707

鳴門の双耳峰 201707