“レジリエンス” とは?

「レジリエンス」という言葉を耳にします。
経営関係だけでなく、安全関係の本を読んでいても、時々出てきます。
安全研修会の案内にも「安全の新しい捉え方“レジリエンスエンジニアリング”」という講義項目があります。

レジリエンスとは、「逆境や困難、強いストレスに直面したときに、適応する精神力と心理的プロセス」と定義づけられているようです。
「現場力」とか「危機対応力」などに関連する心理的プロセスのことだそうです。

もともと、この「レジリエンス」という言葉は、生物生態学等の学問分野で以前から使われていたとのことです。

弱い生物種は、少々の外乱でも大きなダメージを受けるが、強い生物種であれば、大きな外乱を受けても受けるダメージは大きくなく、また元の状態に速やかに戻ることができる。

この「レジリエンス」が最近注目を浴びてきたということです。

このレジリエンスという考え方は、「変化対応力」或いは「復元力」として、下記のような例が挙げられています。

  • 「決まったことは、何としても守らなければならない」というような“固い思考構造”onlyではなく、「状況によっては、規則違反をしなければならないこともある」という“柔軟性を持つ思考”も必要。
  • 「法規制などの決まり事は基本的に守るが、状況により調整対応する」という現場・現実対応姿勢も必要。
    車の運転は、道路交通法に基づきますが、遭遇する道路状況は千差万別で、その場その場で調整しながら運転しています。
  • 経営においては、震災などの脅威に遭遇したとき、組織機能が中断したり低下したりしても、早期に回復する“組織力”としての考え方に該当する。
    BCP(事業継続計画)として提唱されています。

このレジリエンスの考え方が注目を浴びるようになったのは、今までの社会のストレス感(堅苦しさ感)からの視点変更が必要になったということでしょうか?
・イケイケドンドンの行き詰まりから、こころの自由を求めて?
・或いは、儒教社会に老子思想が広まったように?
--というのは筆者の妄想でしょうか?!
或いは、社会の考え方が、一歩進化した(深まった)ということでしょうか?

 

「安全分野における“レジリエンス・エンジニアリング”の適用」という点では、
今までのリスクに基づく安全戦略を[Safety-Ⅰ]として、レジリエンスによる安全戦略は[Safety-Ⅱ]と位置づけています。
まず、[Safety-Ⅰ]で対応し、さらに[Safety-Ⅱ]を考えていくということになります。
リスクアセスメント、リスクマネジメントを十分に実施し、そのうえにレジリエンスについても配慮するということです。
[Safety-Ⅰ]を抜きにして、最初から対応当事者のレジリエンスに頼るのは間違いです!

このレジリエンス・エンジニアリングは、まだ十分に深められていないとのことですが、経営面においては、このレジリエンスは目新しい着眼点ではないようにも思います。
従来から、優秀な経営者は実践していた内容だと思います。
ただその優秀な経営者の実践内容に目を向け、掘り下げて、分かり易く体系化しようということだと思います。
その掘り下げから、新しい “気付き” が生まれ、そして “具体的な行動基準” ができあがればいいのですが---

「経営におけるレジリエンス」も「レジリエンス・エンジニアリング」も、どちらも精神面・思考面も含めた新たな視点として、「もちこたえる力」における興味深い領域になるものと思います。

鳴門の双耳峰

鳴門の双耳峰 201708