バス幼児置き忘れ事故

「送迎バスに取り残された3歳の女児が熱中症で死亡」
「発見されたとき、水筒の水が空になっていた」

このニュースを聞いたとき、
「暑いときには水を飲むんだよ」と教えられて間もない幼児が、暑さに耐えて一生懸命に水を飲んでいる姿が想起されグッときました。

それにしても、同じ事故が繰り返されてしまいました。
「安全管理の不備」という言葉が使われ、園側の回答は「出来ていませんでした」で終始していました。

そして、「管理ミスの連鎖」に関する報道が多くなされていました

ネット記事によりますと

●【速報】静岡・幼稚園バス3歳児置き去り死
「心よりお詫び。安全管理できていなかった」幼稚園が謝罪
園長「バス運転が不慣れ」とも
静岡県牧之原市の「川崎幼稚園」で、今月(9月)5日、園児の河本千奈ちゃん(3)が、通園バスの中に置き去りにされて、熱中症により死亡した事件で、午後3時から、幼稚園側が、記者会見を行った。
会見の冒頭、増田園長が「亡くなった園児、および、ご遺族に、心からお詫び申し上げます」と謝罪した。
その上で、「このような悲しい事故が起こってしまい、我々の安全管理が、きちんとできていなかったことを、きちんと認めて、まずは原因究明に努めてまいりたい」と述べた。

この事件は、5日午後、千奈ちゃんが、通園バスの中で、意識を失った状態で見つかったもの。
バスに乗って登園したものの下車せずに、そのまま、およそ5時間に渡って、車内に置き去りにされたとみられる。
千奈ちゃんは、搬送先の病院で死亡し、死因は熱中症だった。
静岡県警は、業務上過失致死の疑いで、幼稚園を家宅捜索している。
静岡県によると、当時、バスには、園児6人が乗っていて、同乗していた女性職員は、まず2歳児を降ろし、他の子には自分で降りるよう声をかけ、自らも園内に入ったという。当日、バスの運転手を務めていた増田園長も、車内の確認・点検を怠っていた。
また、女性職員は、園児6人が乗っていたことを受け、紙とタブレット端末の両方に「6人」と入力。千奈ちゃんはシステム上「登園」したことになっていた。
しかし、クラスの担任と副担任は、千奈ちゃんがいないことに気付いていたものの、女性職員にも保護者にも、問い合わせをしていなかったという。
幼稚園の会見によると、当日、担当の運転手が休みだっため、園では、別の運転手3人に連絡をとったものの、用事があるなどして、代行の運転手が見つからなかったという。
このため、大型の運転免許を持っている増田園長が、通園バスを運転することになったとのこと。

一方で、車内の確認を怠った理由について、増田園長は、「普段、バスの運転をしないので、不慣れだった」と打ち明けた。
会見で、亡くなった千奈ちゃんに対する思いを問われると、増田園長は「本当に、あんなに暑い中、苦しい思いをさせて、申し訳なかった」と述べた。
会見の中で、幼稚園側は、事件が起きた背景について「いくつかの事情が合わさった」とも明らかにした。
バスに乗車した園児と下車した園児を照合する決まりが伝えられておらず、バスが到着した時の名簿のチェックや、運転手による車内確認やダブルチェックなども行われていなかったという。
「川崎幼稚園」は認定こども園。

この事件に関連して、下記のような報道がありました

●谷原章介、「園児置き去り」事件で増田立義園長の会見に憤慨…「なぜ、名前を呼び間違えることができるのか」
フジテレビ系「めざまし8(エイト)」は8日、通園バスに女児が取り残され死亡した静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の増田立義理事長兼園長(73)らが7日に同園で記者会見したことを報じた。

 増田理事長は会見で「亡くなった園児、ご遺族に心よりおわび申し上げる。われわれの安全管理がきちんとできていなかった。原因の究明に努める」と陳謝した。5日の事件当日にバスを運転した理事長自身やクラス担任、クラス補助など複数の職員によるミスが重なった結果、今回の事件につながったと認めた。
 会見で増田園長は亡くなった女児の名前を何度も呼び間違えた。スタジオで増田園長の会見を見たMCで俳優の谷原章介は「言葉がないですけれども…」と絶句し「子どもの命を預かる責任と今回、閉じ込めてしまって命を奪うことになってしまった責任。どう感じているのかというのが、すごく軽く見えてしまう。そしてなぜ、この会見の席で被害を受けた(女児の)名前を呼び間違えることができるのか。僕には理解に苦しみます」と目を真っ赤にし憤りをあらわにしていた。

●羽鳥慎一アナ、「園児置き去り」事件で園長会見に憤り…「子どもの安全とか命を守る姿勢ではない」
テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」は8日、通園バスに女児が取り残され死亡した静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の増田立義理事長兼園長(73)らが7日に同園で記者会見したことを報じた。

 増田理事長は会見で「亡くなった園児、ご遺族に心よりおわび申し上げる。われわれの安全管理がきちんとできていなかった。原因の究明に努める」と陳謝した。5日の事件当日にバスを運転した理事長自身やクラス担任、クラス補助など複数の職員によるミスが重なった結果、今回の事件につながったと認めた。
 スタジオでは園が明かした事故が起きた4つの原因を伝えた指摘。「バスに乗車した人数と降りた人数を照合する決まりを伝えていなかった」。「車内に園児が取り残されていないかダブルチェックしていなかった」。「クラス補助のスタッフが最新の登園情報を確認していなかった」。「亡くなった女児が教室にいなかったにもかかわらず保護者に確認しなかった」とした。

 司会の羽鳥慎一アナウンサーは、今回の事件に「安全管理がほぼされていないと言っていいんじゃないですかね」と憤りをあらわにしていた。さらに「会見なんかを聞いても子どもの安全とか命を守る姿勢ではないなと感じました」と指摘していた。

この事件の記事を読んだとき、安全管理関係を学んだことのある人なら、「スイスチーズモデル」を思い起こすと思います。

<記事に取り上げられていた欠陥の連鎖>

  • 車内の確認・点検を怠っていた。
  • 紙とタブレット端末の両方に「6人」と入力。千奈ちゃんはシステム上「登園」したことになっていた。
  • バスに乗車した園児と下車した園児を照合する決まりが伝えられておらず、バスが到着した時の名簿のチェックや、運転手による車内確認やダブルチェックなども行われていなかった。
    --「バスに乗車した人数と降りた人数を照合する決まりを伝えていなかった」。
    --「車内に園児が取り残されていないかダブルチェックしていなかった」。
  • クラスの担任と副担任は、千奈ちゃんがいないことに気付いていたものの、女性職員にも保護者にも、問い合わせをしていなかった。
    --「クラス補助のスタッフが最新の登園情報を確認していなかった」。
    --「亡くなった女児が教室にいなかったにもかかわらず保護者に確認しなかった」。

以前(2015年5月)「徳島空港管制ミス」でも引用させてもらったスイスチーズモデルのイラストを再掲載します。

スイスチーズモデル

図は防衛取得研究(19年度調査研究報告1/2)
「スイスチーズモデルと情報セキュリティ:研究員菊池浩氏」文献より

【スイスチーズモデル】
事故防止のために多くの防護策が設けられており、ひとつの防護策が破られても次の防護策によって事故に至るのを防ぐようにしている。
しかし、いずれの防護策にもスライスしたスイスチーズのように大小の穴(防護不備の穴)があいており、(たまたま)ある状況下ですべての穴が重なると、事故に至ることを示すモデル。

これら防護不備の穴が一つでもふさがっていれば今回の悲劇は起きなかったのですが--

このチーズの穴は絶えず変化しています

担当の運転手が休みだっため、園では、別の運転手3人に連絡をとったものの、用事があるなどして、代行の運転手が見つからなかったという。
このため、大型の運転免許を持っている増田園長が、通園バスを運転することになった等の変化。

日常において、(たまたま、都合よく)ことが経過していると、潜在している危険源に気付かず、「安全に管理しています」ということで済まされることがよくあります。
しかし、時の経過と共に、状況は変わり、人は代わり、また設備も劣化していきます。

1年前の7月に起きた事故を受けての厚生労働省と文部省の通達「保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部における安全管理の徹底について」が出されていたその1年後にまた悲報。
経営者の安全に対する本音本心(心の姿勢)の部分、そしてその心の姿勢の園職員への波及等について、各職員が取った動機的原因を掘り下げて欲しいと思います。