BMドクターG⑰:BMのこれからについて考

『ビル管理のドクターG』
 ビル管理技術者は「ビルの総合診療医(ドクター・ゼネラル)」?!

 古い「ビル防災」の本を眺めていたら、「ビル管理はビルのお医者さん」という小見出しがありました。
 ビルの設備等の維持管理に関する様々な問題が持ち込まれ、それらをカバーしなければならないビル設備管理技術者は、多岐にわたる建築設備の管理に関する知識と資格をカバーするビル運営を支える存在。
「ビルのお医者さん」という小見出し、なかなか的を射ているように感じました。
NHK-BSで放送されていた『総合診療医ドクターG』を模倣して、「ビル管理(BM)のドクター・ゼネラル」と格好をつけてみました。
その理想像も探りながら業務の課題を追ってみたいと思います。

建築設備環境管理業務(BM)のこれからについて、思うことの一部を記して、このBM関連の記事をひとまず終わりにしたいと思います。

BM業務におけるリスクアセスメント等について

「業務を遂行できていない(要求される管理品質をカバーできていない)」ことによるリスクについて、
それは「当然に要求される暗黙裡の合意事項としての品質保持」とも言えると思いますが、以前から思っていました。
例えば--

  • エネルギー管理における当然にカバーしなければならない管理レベルについて。
    省エネに関する事項について、改善提案をしなかったことへの責任論が出たとしたら---
    --電力料金の高騰に伴い再度省エネの熱が高まるかもしれません。
  • リスクアセスメントにおいて、リスクの評価軸としての「回避可能性」について。
    組織の実力評価の指標の一つとして取り上げられないか?
    --この管理レベルについては、“環境管理の5要素(安全・衛生・快適・利便・経済性)”についての評価軸も明確になってくるかもしれません。

業種は違いますが、設備工事業において下記のような例があります。
担当者の習熟度能力評価に「配管計装図が読める、図面を見て緊急対応ができる、機械の構造と外観からほぼ理解できる」などの項目を入れ、業務を行う上での高い技術レベルを求めることで、設備関連の災害防止などにも繋げている。
⇒この教育指導として
担当者に「Know Why(「なぜ、そうなるのか?」と疑問を持ち、その理由を知るように)と話し、作業や安全への理解を深められるように努めている。

またBCPの内容とリンクしながらBM設備管理を考えていくと、いろいろな課題が浮き上がってくるようになります。
BCP検討時の企業活動をBM業務の立場で深めていくと言い換えることができると思います。

以上の他にもいろいろと考えられます。
AIがBM設備管理においても身近な存在となるのも近いかもしれません。


また、雑誌「安全と健康 2020/03」に取り上げられていました[列車見張り専門の会社における安全管理活動の事例」が記憶に残っています。
人への管理が主となる業種での活動内容で、参考となるかと思います。
(要点列記してみます)

○設立当初の主に労務管理における「人への対応の行き詰まり」という問題点

・遅刻や交通事故などのトラブル多発
・頭ごなしの注意
--怒って人は減ることはあっても、ミスが減ることはなく、悪いスパイラルに陥っていた。(社長の反省)

○ゼロ災運動との出会い

<ゼロ災運動の理念>
・「一人ひとりカケガエノナイひと」
  →人を尊重する
・「トップの率先垂範」
  →率先して行動する
・「全員参加」
  →全員に目を向ける
⇒「ゼロ災運動で会社が良くなっていくのでは」という一筋の光

○社長の決意と実践

・やるならトコトン
 --企業理念や行動指針にゼロ災運動の基本を取り込み「日本一安全な列車見張り専門会社」を目指す。
・教育/研修に注力した
 --見張り訓練、KYT4ラウンド法、ワンポイントKY等
   チーム討議(気づきを目的--自分の意見を本音で出し合う)
   内容は凡事徹底、チームワーク、コミュニケーション等
 --唱和、指差し呼称、オアシス運動
 --各自目標の発表
 --TBM(ツールボックスミーティング)
 --終礼は「ヒヤリ・ハット」「グッドジョブ」「ありがとう」報告
 --各班のリーダーは打合せ等の内容をメール等で報告
・積み重ね(13年間欠かさず継続)が安全の力となっている。

○注意した点

・正しい手法の徹底実践
 --正しい手法の意味を知り、納得した上で実践
   (手抜きは行動に表れる--それを見抜くのがリーダーの役割)
 --正しい手法の相互チェック

継続は“トップの覚悟”で決まり、社員の理解でその内容は深まる。
そして、身近な正しい手法の徹底実践から経営改革は始まる。
重要な示唆を与えてくれている事例だと思います。