「“感情労働”という視点」 ②

雑誌「安全と健康」特集「感情労働」について、“感情労働”とは? を続けたいと思います。

筆者の西武文理大学の田村尚子教授は、働く人の心に感情労働が与える特徴として次の3点を挙げられています。

  1. 「心のエネルギー」を大量に消費する。
  2. 顧客と感情労働を行う者の間は互酬関係ではない。
    どんなに心を尽くして感情労働を行っても、顧客はそれに応える義務はない。
  3. 不可視性が強く、精神的に消耗・疲弊しても周囲に気づかれにくく、また評価もされにくい。

人への思いやりも、それが労働の場となると、“苛酷なエネルギー消費(消耗)”となってしまいます。
本人はそれに気づかずに、メンタル面でその疲労が蓄積されていくことになります。
この点、顧客のもたらす難題に上手に対応しているベテランの人には感心します。
そのは、慣れにより修得されたであろう手法(感情の処理手法)であろうと思われますが、秘訣を教えてもらいたいものです。

「感情労働」を最初に提唱したアメリカの社会学者ホックシールド氏は、販売員とソーシャルワーカーを例にして、感情労働のタイプを4つに分類しているとのことです。
販売員は不特定多数の顧客に対応するが、それは単発的・一時的なものである。
一方、ソーシャルワーカーは特定の相手と中・長期にわたって関係を継続させる。
田村先生は、これを対面と非対面に分けて、4タイプで考察されています。

  1. [不特定・一時的・対面]タイプ
    販売員、乗客乗務員、修理等で顧客先を初訪問する技術者等が該当する。
    第一印象で相手が親しみや好感を抱くように、笑顔や行動の仕方など外見を維持する努力と相手の状況に即応する感性等が求められる。
  2. [不特定・一時的・非対面]タイプ
    技術系電話相談者、コールセンターのオペレーター等が該当する。
    特に傾聴スキル・説明スキル、専門的知識が求められる。
    非対面かつ対応に時間的制約があるなかで口頭という限られた手段での受け応えが主である。
    集中力を要する上に、相手の「要領を得ない質問や低い理解力への苛立ち」や「クレームなどの一方的な怒りや攻撃」等への戸惑い・怒り・悔しさ等、自らの感情を抑え我慢し続けることが多い。
    その上で、相手をなだめ落ち着かせるなど相手の感情を適切な状態に変化させる努力が求められ、精神的負担や疲弊は少なくない。
  3. [特定・中長期・対面]タイプ
    メーカー等の取引担当者、小中学校教員、病棟看護師等が該当する。
    顧客、家族等との良好な関係の保持に向けて、その前提となる感情労働の行使による相手との信頼・信任関係の構築が非常に重要になる。
  4. [特定・中長期・非対面]タイプ
    電話コーチング、電話カウンセラー等が該当する。
    相手の表情や態度を直接見ることができず、いわば「声の表情」を読み取る感性と集中力が求められる。
    正確に真意は伝わったか、きちんと理解されたか、誤解はないかなど、より一層の気遣いが必要となる。
    また、電話という手段によるため、相手からの中断が容易である。
    感情労働を駆使した信頼関係が継続のために必須となる。

さて、考えている対応はどのタイプに該当するか?
どのパターンなら出来るか?(自分はどれもダメです!)
イメージが整理されてきました。
「2」の技術系相談者は難題だと思います。
ソフト面で引っ掛かったとき、供給先へ電話することがあるのですが、非常に上手な対応でフォローも有り感心することがあります。
質問への対応のパターン化と、訓練、そして対応者のレベルの高さに感心します。
企業により相当の違いが出ると思います。
何度掛けても掛からない場合は苛立ち、つっけんどうに対応された場合はへこみます。
それにも増して、一方的に掛かってきて、一方的な売り込まれる電話には閉口します。
「切るよ」と言っても切らない場合、こちらは苛立っているのですが、掛けてきた相手の感情面での負担はないのでしょうか?
「3」が通常のタイプだと思いますが、それも「4」の非対面となると、十分な信頼関係が出来ていないと、一層要求されるスキルレベルが上がると思います。

難しい課題に入り込んでしまいました。
当方の認識の深化も必要ですが、もう少しこの課題におつきあい願えればと思います。