① リスクアセスメント導入の効用について

リスクアセスメントは職場の「危険性及び有害性の洗い出し」から始まり、「リスクの見積もり」「リスク評価」「リスク低減対策の実施」へとつなげる労働災害のリスク低減活動です。
導入することにより以下のような効果が挙げられます。

1.作業現場のリスクが明確になります

作業現場の潜在的な危険性または有害性が明らかになり、危険の芽(リスク)に目を向けることができます。
--「リスクの洗い出し作業」の徹底によって、今まで気づかなかった危険箇所をPick Upし、それへの対応策を深めていくきっかけになります。
場合によっては、その場で危険の芽を摘むことができるかも知れません。

これまでは、考えられる災害・事故に、個人の感性や経験で対応していた面があったかもしれませんが、作業を整理し危険源に着目していくことで、作業に潜むリスクを明確に把握できるようになります。

2.リスクに対する認識を共有できます

リスクアセスメントは現場の作業者の参加を得て、管理者と共に進めるので、作業現場全体の安全衛生上のリスクに対する共通の認識を持つことができるようになります。
--一連のリスクアセスメント展開に現場の担当者も含めて、その検討過程を共にすることで、共通の認識を形成することができるようになります。
ベテランの経験と新人の視点を活かすこともできます。

3.安全対策の合理的な優先順位が決定できます

リスクアセスメントの結果を踏まえ、事業所はリスク低減策を検討することになりますが、リスクの見積もり・評価の結果により、その優先順位を危険源の種類等を考慮して決めることができます。
--今までのような経験や思いつきによる危険・有害性の認識から、職場に潜む個々の危険・有害性についてその種類に応じた重み付けをした認識ができるようになります。

4.残留リスクに対して「守るべき決めごと」の理由が明確になります

技術的、時間的、経済的等の理由によりすぐに適切なリスク低減措置ができない場合、暫定的な管理的措置を講じたうえで、対応を作業者の注意に委ねることになります。
この場合、リスクアセスメントに作業者が参加していると、なぜ注意して作業しなければならないのかの理由が理解されているので、守るべき決めごとが明確になり、日常の作業にそれが活かされるようになります。
--すぐに対策がとれないような事項についても、その危険性又は有害性を認識したうえでの対応となりますので、日常のリスク回避行動が納得して行われるようになります。
(また、残留リスクの認識は、客先等への説明責任を果たすという点においても活用でき、その企業の信頼を増すことにもつながります。)

5.従業全員が参加することにより「危険」に対する感受性が高まります

リスクアセスメントを作業現場全体が対象となり、他の作業者が感じた危険についても情報が得られ、業務経験が浅い作業者も作業現場に潜在している危険性または有害性を感じることができるようになります。
--リスクアセスメント活動がベテランの貴重な経験を活かす場ともなります。

6.費用対効果の観点から有効な対策が実施できます

リスクアセスメントにおいて明らかになったリスクやその低減措置ごとに緊急性と人材や資金など、必要な経営資源が具体的に検討され、費用対効果の観点からも合理的な対策を実施することができます。
--対策には費用がかかるもの、或いは人材育成に時間が必要なものも出てきますが、年間計画等において取り組む事項を明確にすることができます。

以上「手間ひま、導入の煩わしさ」というデメリットを乗り越えて、リスクアセスメントを導入することにより事業場が得られるメリットです。
このような「リスクマネジメントのシステム」を持つことは、業務改善への体系的な分析ともなり、企業経営において重視すべきポイントと考えます。

※事故・災害時における事後経費・社会的信用の失墜等に比べれば、導入運営の経費は微々たるものと考えられます。(またその導入により経費削減のきっかけとなるケースもあります)