労働安全衛生マネジメントシステム指針(平成18年厚生労働省告示113号:以下「OSHMS指針」)示された労働安全衛生マネジメントシステムは次のような特徴が挙げられています。
- トップの安全衛生方針に基づき事業実施に係る管理と一体になって運用される組織的な取り組み
経営トップによる安全衛生方針の表明、次いでシステム管理を担当する各級管理者の指名とそれらの者の役割、責任及び権限を定めてシステムを適正に実施、運用する体制を整備することとされています。
また、事業者による定期的なシステムの見直しがなされることとなっており、安全衛生を経営と一体化する仕組みが組み込まれて経営トップの指揮のもとに全社的な安全衛生が推進されるものとなっています。 - 計画(Plan)—実施(Do)—評価(Check)—改善(Act)の「PDCAサイクル」構造
「PDCAサイクル」を通じて安全衛生管理を自主的・継続的に実施する仕組みです。
基本的には安全衛生計画が適切に実施・運用されるためのシステムですが、これに加えて従来のわが国の安全衛生管理ではなじみの薄かったシステム監査の実施によりチェック機能が働くことになります。
この仕組みが効果的に運用されれば、安全衛生目標の達成を通じて事業場全体の安全衛生水準がスパイラル状に向上することが期待できます。 - 明文化・記録化により、安全衛生活動の確実で効果的な実施
システムを適正に運用するために関係者の役割、責任及び権限を明確にし、文書にして記録することとされています。
この記録は、安全衛生管理のノウハウが適切に継承されることに役立つものです。
手順を重視し、文書により明文化し、その記録を保存することを重視します。 - 危険性または有害性等の調査(リスクアセスメント)およびその結果に基づく対策の実施による本質安全化の推進
労働安全衛生法第28条の2に基づく「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」により、危険性又は有害性等の調査を行い、その結果に基づいて労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を採るための手順を定めることとされています。
これはリスクアセスメントの実施とその結果に基づく必要な措置の実施を定めているものでOSHMSの中核をなす事項です。
厚生労働省が平成16年2月に発表した「大規模事業場における安全管理体制等に係る自主点検結果」(都道府県労働局を通じての労働者数300人以上の約2,000の事業場が対象)によると、総括安全衛生管理者の見解において、労働安全衛生マネジメントシステムを運用、構築中、あるいは、設備・作業の危険有害要因のリスク評価を実施している事業場は、これらの取り組みを実施していない事業場に比べて、災害発生率(年千人率)が3割以上低いという結果が出ています。
この調査は大規模事業場を対象としたものですが、中小規模事業場においても同じ傾向を示す(或いはより顕著に差が出る)ものと推察できると考えます。