リスクの軽減(安全原則)
欧州機械指令では、リスク軽減の安全原則を次のように示しています。
- 可能な限りリスクを除去または軽減すること(安全原則1)。
- 除去できないリスクに対しては、必要な防護手段を採用すること(安全原則2)。
- 採用した保護手段の欠点による残存のリスクをユーザーに知らせ、何らかの特別なトレーニングを必要とするか否かを表示し、かつ身体保護具の必要性を明記すること(安全原則3)。
また、米国国防総省規格(MIL)では、確認されたハザードを回避・軽減するため下記に示す順序で安全原則を採用するとしています。
【安全原則1】リスクを最小にする設計とすること
最初からハザードを除去する設計とする。
確認されたハザードを除去できない場合には、許容できる水準まで関連するリスクを設計上から軽減させること。
【安全原則2】安全装置を採用すること
設計上、確認されたハザードを除去できない場合、もしくはその関連するリスクを十分に軽減できない場合には、安全装置を使用して許容できる水準まで、リスクを軽減するものとする。
安全装置を採用した場合には、定期的な機能チェックができるようしておかなければならない。
【安全原則3】警告表示を設けること
設計上からも安全装置の採用によっても、確認されたハザードを効果的に除去できないし、関連するリスクを十分に軽減することもできない場合には、人がそのハザードの存在を認め、そのハザードについて人に注意する十分な警告シグナルを発するものを用いるものとする。
警告シグナルおよびその使用に際しては、その警告シグナルに対して人が誤解する可能性が最小になるものとし、同種のシステム間で標準化されるものとする。
【安全原則4】作業手続きと必要なトレーニングを明らかにすること
設計上からハザードを除去することが実行不可能であり、安全装置および警告装置によっても、その関連するリスクを十分に軽減することができない場合には、作業手順とトレーニングが実施されなければならない。
しかし、明確な権利放棄条項がない限りカテゴリーⅠまたはⅡの危険に対するリスク低減手法として、警告その他の書面による助言形式を使用してはならない。
作業手順書には保護具の使用も含む。
災害予防の表記は、標準化すること。
重要であると判断される作業と活動は、従業員の熟練度に応じた認定が必要となることもある。
なお、MILではハザードの大きさを下記のカテゴリーに階層化しています。
ハザードの大きさ | カテゴリー | 被害の大きさ |
---|---|---|
致命的 (Catastrophic) | Ⅰ | 死亡、システムの喪失、または重大な環境破壊 |
危機的 (Critical) | Ⅱ | 重傷、重大な業務傷害、甚大なシステムの損害、または甚大な環境破壊 |
限界的 (Marginal) | Ⅲ | 軽傷、軽度の業務傷害、軽度のシステムの損害、または軽度の環境破壊 |
ネグリジブル (Negligible) | Ⅳ | 上記Ⅲに至らない業務傷害、システムの損害、または環境破壊 |
管理業務を請け負うケースにおいては、【安全原則4】からの対応が主となると思いますが、
基本的な考え方としては、
「重大な被害に対するリスク対策は、契約当事者間で設計上で回避・軽減せずに、警告などの表示形式のみの実施でよいとする特約条項を契約上交わしていない限り行ってはならない」
という点を認識しておく必要があると考えます。
【メモ】
パフォーマンスレベル(PL)における各カテゴリーの「安全水準のカテゴリー(ISO13849-1:1999)」の要求内容も、システムの挙動を考察するとき参考となります。