福岡医院火災事故 その後

2013年10月11日 福岡市博多区の病院で起きた火災。
入院患者10人が死亡した事故でした。
当ブログにおいても、2013年10月・11月に、メンテナンスの視点から「①電気設備管理」「②運営・管理」「③消防法と建築基準法の接点」と題した記事を掲載させて頂きました。

今年(2017)の3月8日、この事故についての記事が新聞等に掲載されました。


入院患者など10人死亡の病院火災 院長を不起訴へ 福岡

4年前、福岡市博多区で整形外科医院が全焼し、入院患者など10人が死亡した火事について、検察は、防火扉が正常に機能したとしても、煙が広がるのを防ぐことはできなかったとして、業務上過失致死傷の疑いで、書類送検された院長を近く、不起訴にする方針を固めたことが捜査関係者への取材でわかりました。
4年前の平成25年10月、福岡市博多区の「安部整形外科」が全焼し、入院患者など男女10人が煙を吸って、一酸化炭素中毒で死亡したほか、5人がけがをしました。
警察は防火扉のほとんどが機能しないなど、安全管理に不備があったとして、おととし、49歳の院長を業務上過失致死傷の疑いで、書類送検していました。
捜査関係者によりますと、福岡地方検察庁は、同じような構造の建物を使って火災を再現する実験などの鑑定を行った結果、防火扉が正常に機能したとしても、煙が広がるのを防ぐことはできなかったと判断したということです。
また、火災を想定した避難訓練をしていなかったことなど、防火管理体制の不備についても、被害との直接的な関係は立証できないと判断したものと見られます。
こうしたことから、福岡地方検察庁は、院長の刑事責任を問うことはできないとして、近く、不起訴にする方針を固めました。
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「安部整形外科」院長不起訴へ 福岡地検 毎日新聞2017年3月8日

 福岡市博多区の医院「安部整形外科」で2013年にあった入院患者ら10人が死亡、5人が重軽傷を負った火災で、福岡地検が、福岡県警から業務上過失致死傷容疑で書類送検された院長の男性医師(49)を不起訴とする方針で検討していることが関係者への取材で分かった。
事前に適切な防火措置を取ったとしても、被害は食い止められなかったと判断したとみられる。
 火災では死亡者全員の死因が一酸化炭素中毒だった。
出火直後に、法律で設置が義務づけられている防火扉が正常に機能しないなど防火体制の不備が指摘された。
地検は院長が医院の業務全般を統括する立場にあるため、火災の発生を防止し被害を軽減するための防火管理上の注意義務を怠っていなかったかを慎重に捜査してきた。
 火災後の医院内で煙の回り方を確認する実験などをした結果、防火扉などで適正に対応していたとしても煙が広がることを防げず、死傷者が出たと判断したとみられる。
 県警は、出火元は1階処置室で、機器のコンセントプラグと差し込み口の間にほこりなどがたまり発火したと断定。
防火扉の一部に紙やストッパーを挟み、閉まらないようにした▽防火扉の煙や熱を感知する部品が壊れていたのに、点検を怠った▽認知症だった院長の母親(当時72歳)を防火管理者とした--などと指摘し、院長を15年2月に両親を除く13人を死傷させたとして書類送検した。
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業過致死傷容疑の院長、不起訴検討 10人死亡火災

 福岡市博多区の安部整形外科で2013年、入院患者ら10人が死亡した火災で、業務上過失致死傷容疑で書類送検された男性院長について、福岡地検が不起訴処分とする方向で検討していることが捜査関係者への取材でわかった。
防火設備の不備がなかったとしても、被害は防げなかったと判断したとみられる。
 火災は13年10月11日未明に発生した。
福岡県警によると、1階の診察兼リハビリ室から出火し、鉄筋コンクリート地上4階、地下1階の医院内に燃え広がった。
1、2階にいた入院患者8人と、3階に住んでいた元院長夫妻の計10人が死亡し、入院患者ら5人が負傷した。
 その後の調べで、院内にある防火扉の一部が当時、閉まらないように固定されるなどし、作動していなかったことが判明。
これによって高温の煙が一気に充満して被害が拡大したなどとして、県警は15年2月、院長を書類送検した。
 だが院内の検証や実験を重ねた結果、防火扉が正常に機能していたとしても被害を防ぐことは困難で、院長の過失責任は問えないと地検は判断したとみられる。
 火災の原因は、1階にある医療機器の電源プラグがショートして起きた「トラッキング現象」によるものとされる。


2013年10月11月の当ブログでは、
メンテナンスの視点で、「すべての責任を施設代表者のみに帰するのは酷なような気がします」として、
この医院施設の維持管理における
・電気主任技術者の役割(火災の原因が電源プラグのトラッキングとされている)
・施工業者の役割(確認申請の不備--火災時の煙の流れの問題等)
・防火管理者の役割(夜間管理体制の不備?、火災訓練の不備、消防設備点検の実施状況?)
・施設管理者の役割(防火扉の作動の維持、厨房排気ダクトに油の溜まり防止)
等について触れました。

今回の記事は、院長の刑事責任についての記事であり、当施設における上記の担当者等の具体的な管理責任については触れられていません。
場合によっては、民事責任、或いは行政処分等での問題となってくるかもしれません。
メンテナンスに携わる者として心しておかなければならない重要事項です。

 


『最良の教材は過去の失敗例』fromチャルディーニ先生

・職務上の判断ミスを最小限にするにはということで、そのトレーニング・プログラムの種類によって効果に差が出るのかを調べました。
具体的に言うと、過去の成功例と失敗例のどちらに重点を置いてトレーニングすべきなのかを明らかにしたかったのです。
・一方のグループでは、誤った判断によって残念な結末に至った実例を取り上げ、もう一方のグループでは、優れた判断によって悲劇的な結末を避けられた実例を取り上げて学びました。
・その結果、ミスのない事例を扱ったトレーニングと比べて、ミスが起きた事例に基づくトレーニングは、参加者の判断力がはるかに向上することがわかりました。
・多くの企業はふつうトレーニングの重点をプラス面、つまりどうやって優れて意思決定を行うかのみに置いていますが、過去にどのようにミスが起きたのか、どうすればそうしたミスを避けられたのか(そして、避けられるのか)にトレーニングの重点を置くべきなのです。

事故災害から得られる教訓の方が深く身につくようです。

東寺 梅