今まで、経済アナリスト藤原直哉氏の企業文化論について記してきました。
どのような企業文化の組織に身を置くかということは、そこで働く人の人生に大きく影響します。
そして、その企業文化において決定的に大事な要素は「リーダーシップ」です。
藤原先生は、「建設的な文化をつくるために具体的にどうすればいいのか?」について、「建設的文化をつくるサイエンス」として、この“リーダーシップ論”についても言及されています
前号では、「“リーダーシップの技術体系”9項目」の付記事項として、「マネージャーとリーダーの違い」を記しました。
今回は、付記事項②「他人を教育・訓練する技術-2」についてですが、前回同様示唆に富んだ内容です。
人間のやる気に関しては、やる気を失わせる要因と高める要因がある。
ほとんどの場合、給料の高い低いは、会社を辞める原因ではない。
なぜならば、入社する時点で、約束の給料には納得していたはずだ。
それでも「給料が安い」ことを理由に辞める人が多いのは、他でもない。
自分と同じ能力だと思っている同僚や同業他社の人間に比べて、自分の給料が不当に低いと感じて、やる気を失ってしまうからだ。
「アイツにひきかえ、オレは正当に評価されていない、だからこんな給料で・・・」と考える。
仕事上の条件や地位に不満足なのではない。
逆に給料を上げても昇進させても、それで必ずやる気が高まるとはいえない。
やる気を高める要因は、「成長した」「学習した」「仕事が達成できた」「認められた」「挑戦できる」「興味深い仕事がある」「責任が増える」「自由裁量が増える」等々である。
やる気を失わせる要因とやる気を高める要因は、別である。
給料の上げ下げがやる気と比例するわけではない。
大事なのはフェアに業績評価をして、賃金を与えることだ。
だが実際には、客観的な業績評価はとても難しく時間とコストをかけるしかない。
論功行賞に不満があると、社員は去っていくだろう。
会社を元気よく、建設文化に持っていくには、社員のやる気を高めなければならない。
賃金を動かしたり、職場を異動させたりする前に、認めてあげること、興味深い仕事をさせることが先だ。
「ワシは社長だ」「オレは部長だ」とふんぞり返っていては、会社はいいほうに向かない。
よくよく考えて行動しないと、リーダーシップもチームワークも全然働かない。
リーダーシップ理論には、まだ日本人がほとんど触れていない膨大な体系がある。
●「“やる気を失わせる要因”と“やる気を高める要因”は、別である」といわれています。
これは「ハーズバークの二要因説」に通じる内容かと思われます。
これは、下記のように説明されています。
- 仕事の中には、人間の積極的な態度を引き出す“満足要因”と、人間に不満足をもたらす“不満要因”が独立的に存在している。
- 満足要因とは、「達成感」「やりがい」「承認」「責任」「成長」「昇進」などであり、個人の心理的成長と自己実現を促進し、人間の真の動機づけに積極的に貢献する要因。
- 不満要因とは、「職場環境」「政策と管理」「人間関係」「労働条件」「財務安定性」などであり、たとえそれらが満たされたとしても、人間の積極的な動機づけにはならないが、それらが欠乏すると、「無気力」「欠勤」「退職」とか「サボタージュ(怠業)」などが発生する要因。
つまり、不満足要因(やる気を失わせる要因)と満足要因(やる気を高める要因)のそれぞれを満たしていく経営が求められるということです。
また、法政大学教授 坂本光司先生はその著「経営者の手帳」の中で、次のように記されています。
「社員や下請企業は・仕入先企業は決して、賃金カットや大幅なコストダウンそのものに不平・不満・不信感を募らせるわけではありません。経営者をはじめとした組織のリーダーの、自己保身的でいい加減な姿勢、対処法に反発するのです。」
●「大事なのはフェアに業績評価をして、賃金を与えることだ。
だが実際には、客観的な業績評価はとても難しく時間とコストをかけるしかない。」
この点については、(株)武蔵野の評価制度を思いつきます。
カリスマ社長小山昇氏の苦心の作です。
一見“道徳的経営”とは別物のようで違和感を持たれる方もおられると思いますが、現場の現実に根ざした優れた経営手法だと思います。
●藤原先生は あとがき で、
「老舗の倒産も中高年の失業も、基本的には“変化を自ら拒むことから生じる問題”である。」
「変わることができないこと、イコール“死”」といわれています。