湿度低下の季節

居室空気環境の湿度低下の時期が今年も到来します

建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づく環境衛生管理基準では、執務空間の相対湿度について(空気調和設備使用の場合)40~70%が快適環境として維持すべき基準として示されていますが、冬季暖房時にはこの値が維持できなくなるケースが増えてきます。
加湿器を使っても40%を下回るケースが多くあります。
(少し室内温度を下げれば基準内に入る場合もありますが---)
これは、住宅等の居室においても同じ傾向にあると思います。
※筆者の執務室においても、(雨天以外の時に)相対湿度が40%を下回るときが頻発します。

このような、湿度の問題について以下のような独立行政法人労働安全衛生総合研究所のデータが公表されています。


2013年の冬季に⾸都圏の⼤型オフィスビル(4事業所,全105ヶ所)において,温湿度の測定を連続的に実施した。
平⽇の勤務時間帯(9:00〜18:00)の温湿度測定の結果、測定場所における勤務時間帯のうち30〜40%が相対湿度40%RH未満と,事務所則の基準値(40%RH以上)を満たしていないことが分かった。
さらに,温湿度調査を実施した事業所に勤務する従業員に対して,アンケート調査を実施した。
20項目の⾃覚症状について,職場環境が原因と思われる過去⼀週間の⾃覚症状の有無(⼀週間に⼀度以上の頻度で,職場を離れた時に悪化する場合を除く。)を聞いた結果は下図のようになった。
夏季に同じ事業所で実施した調査結果と⽐較した結果,⾚字で⽰した「⼿や⾜の冷え」「⽪膚の乾燥・かゆみ」「くしゃみ」「せき」「⿐⽔・⿐づまり」「のどの痛み・乾燥」が夏季に⽐べて有意に⾼い割合であることが判明した。
これらのうち,「⽪膚の乾燥・かゆみ」「のどの痛み・乾燥」「くしゃみ」「せき」「⿐⽔,⿐づまり」は乾燥が⼀因となっているものと考えらる。

湿度低下の影響

 

 

 

 

 

 

 

 

【冬季ならびに夏季オフィス環境における自覚症状の割合】


一般に、室内湿度の低下により発生する身体症状等の障害として以下のような項目が挙げられます。

<風邪やインフルエンザ>
空気が乾燥すると、⼝や⿐の呼吸器系の粘膜が乾燥し、風邪などの感染に対する防御機能が低下してしまう為、風邪やインフルエンザなどのウィルスが体内に⼊りやすくなる。

  • 呼吸器系の粘膜が乾燥すると、喉の⽑細⾎管が収縮して繊⽑の働きが低下して、痰を出す機能が落ち、気管⽀や肺に炎症が起きやすくなる。
  • ウイルスは、空気中の⽔分が多いと、⽔の粒に、塵や埃と⼀緒に ウイルスがくっついて床に落ち、空気中内での移動が出来にくくなるが、乾燥していると、塵埃などに付着して⻑時間空中を漂うことになる。

尚、ウイルスと湿度について下記のような説明があります
・湿度35%以下では、1⽇経過しても⽣存
・湿度50%では、約10時間後にほぼ全滅
(室温21℃、湿度65%の状態を16時間保てば、99%ウィルスの増殖⼒や感染⼒を奪うといわれている)

※ノド鼻乾燥への身近な即対応策は「マスク」!

<ドライアイ>
パソコンやスマホの画⾯を⾒続けることで涙が出にくくなった目に、乾燥した空気が目の粘膜を刺激し、ドライアイを悪化さる。
あまりまばたきをしない状態になっているところに空気が乾燥した条件が加わると、目の粘膜から⽔分が奪われてしまうことになる。

※目薬で目に潤いを与え、粘膜を保護することが可能。

<美容面>
空気の乾燥状態(湿度不⾜)は、髪や肌などにも影響する。
髪は⽔分の吸放湿が⼤きく、乾燥するとパサついて広がりやすくなる。
また、肌については、肌荒れ、かゆみの原因となる。

※保湿クリームで対応

<青果物や絵画、古美術品>
野菜は90%前後の⽔分を含んでおり、その5%が減少すると、鮮度や品質が低下し、商品価値がなくなるといわれている。
絵画や古美術品は、湿度不⾜により作品のひび割れや、ひずみ、劣化を起こす。

<工場や電算機室>
湿度不⾜によって、静電気が帯電しやすくなり、不快な電撃を起こす。
また発⽣した静電気により、塵埃付着、印刷機械やコピー機の紙詰まり、繊維のからみが起こる。

湿度低下による直接の重大事故は無いようですが、いろいろと影響が出てきます。
冬季における室内湿度は注意事項です。
室内温度を少し下げる(相対湿度が上がる)、或いは加湿器を有効に活用する等の対応でしのぐことになります。
面積の大きな容器等による自然蒸発も有効と思われます。
当筆も、水のこぼれに注意しながら、執務室で洗面器による加湿の有効性を実験してみたいと思います。

※なお、冬季の湿度は40~60%程度を目安にすべきで、あまり高くしすぎると、今度は結露の問題が発生します。
窓ガラス・サッシ部の結露が出てきます。
またカビ・ダニ問題も発生します。

もしも加湿オーバーで室内湿度が高くなりすぎるようなことがあれば、外気取り入れ(換気)により湿度を下げると同時に汚染空気の入れ換えもできますが、その間の室温低下による我慢が必要です。
冬季の空気水分含有量対応はやっかいです!

201711鳴門の双耳峰201711鳴門の双耳峰

201711鳴門の双耳峰