『ビル管理のドクターG』
ビル管理技術者は「ビルの総合診療医(ドクター・ゼネラル)」?!
古い「ビル防災」の本を眺めていたら、「ビル管理はビルのお医者さん」という小見出しがありました。
ビルの設備等の維持管理に関する様々な課題が持ち込まれ、それらをカバーしなければならないビル設備管理技術者は、多岐にわたる建築設備の管理に関する知識と資格をカバーするビル運営を支える存在。
「ビルのお医者さん」という小見出し、なかなか的を射ているように感じました。
NHK-BSで放送されていた『総合診療医ドクターG』を模倣して、「ビル管理(BM)のドクター・ゼネラル」と格好をつけてみました。
その理想像も探りながら話題にしてみたいと思います。
前回設備管理に関連するリスクについて取り上げたのですが、挙げれば切りがありません。
BCP(事業継続計画)との関連においても、日常の活動の中でリスクの洗い出しとその対応策の検討を深めておく必要があります。
取り上げた各々の危険事象について、その「影響度(被害の大きさ)」「発生・遭遇の頻度・可能性」「対応の回避・困難性」という評価軸でそのリスクを評価し、そのリスクの大きさに基づき、優先的に対応していくということになります。
これらのリスク要因については、責任者の方は当然に目論まれていることだと思いますが、関係する人達とその内容を共有しておくこと、そして説明のため文書化等も必要です。
<リスクの洗い出し>
考えられる災害・事故等の危険事象については、それらに起因するハザード(二次的ハザード)を、各施設の状況に応じて、漏れのないように洗い出していく必要があります。
因みに、前回ピックアップした「地震」「火災」「風水害」停電」等について、考えられるハザードへの取っ掛かりを再度挙げてみますと---
地震によるハザード&危険事象
- 地震動(揺れ)
--建築物倒壊、設備・備品等の移動
(負傷、圧死) - 地震による液状化の発生
--家屋倒壊、家具・設備・備品等の移動
(負傷、圧死) - 地震に起因する火災
--初期消火の失敗、通報の遅れ、避難遅れ
(焼死、一酸化炭素中毒死、負傷) - 津波による浸水
--水没
(水死、水損) - エネルギー等のインフラ供給停止
- ---
☆事前対応不備の検討
火災によるハザード&危険事象
- 火災の発生
--各種火災
(原因&傾向分析? 電気火災等) - 避難遅れ、初期消火の失敗、通報の遅れ
- 火災の拡大
--焼死、一酸化炭素中毒死、負傷
財産の損失
社会的責任問題の生起 - ---
☆出火起因物、事前対応不備の検討
風水害によるハザード&危険事象
- 台風(雨・風・洪水)
--建築物破壊、水没・浸水
(水死、家屋破損、漏水:水損) - 集中豪雨(雨・洪水)
- ---
その他自然災害によるハザード&危険事象
- 雷・猛暑・寒波等による各種被害
感染症・中毒の蔓延によるハザード&危険事象
- 集団感染・インフルエンザ・食中毒による業務停止等
科学社会事故一般(交通事故・インフラ事故他)によるハザード&危険事象
- 建築関係
--倒壊 他 - 設備関係
--停電・感電、冷暖房停止、ガス等の燃料停止、漏水(給排水関係)、通信関係の停止 - 交通関係
--交通事故、通行困難(使用道路の閉塞) - 活動資源の供給停止
- 停電、断水、燃料停止
- 情報通信
--電話、インターネットの使用不可
--パソコン等情報機器の破損
--データ等重要書類の損失 - 人
--従業員の勤務困難(3割程度の稼動)
--従業員等の負傷
※設備管理・施設管理は「人」の要素が大き業務!
挙げれば切りがありませんが、警備員教育と同じように、リスクの内容を反芻検討し、深耕していくことにリスクアセスメントの真意があります。
周囲環境は変化するので、この活動は継続が大切となります。
その際、「~~であれば」ホワットイフの問いかけで深めていくという方法があります。
「…したらどうなるか?」と自問してみる。
--「○○が破損したらどうなるのか?」「○○がダウンしたらどうなるのか?」というような自問してみる。
※「ヒヤリ・ハット&気がかり事項」を記録し活用することも考えられます。
そして、これらを原因としてどのような望ましくない事象へと発展していくのかと詰めていくこともできます
この過程で対応策が見えてくるかもしれません。
また好ましくない事象が気になるのであれば、その原因となる要因を掘り下げていくという方法も考えられます
※「ナゼナゼ」と深めていくという手法です
例えば、「○○で火災が発生したら--?」というようなケースで、火災の原因系を掘り下げることによりいくつかの防止策も見えてくるかもしれません。
ビル設備管理技術者は日常のビル内環境を快適・利便・経済性を念頭に維持運営しながら
このような非常事態に対応することも準備しておく必要があるということになります