“変化”と“都合”

最低賃金大幅アップ

該当する人には福音ですが、厳しい状況下にある中小企業もあると思います。
2年連続して30円近く上昇しています。
一線を離れて10年近くなりますが、その間に100円近く上がっています。
どうやってこの上昇分を吸収していくか、頭を痛めておられる中小企業経営者の方も多いのではないかと思います。

安全管理の考え方の一つに「フェイルソフト」というのがあります。
事故や故障が発生した際に、問題の個所を切り離すなどして被害の拡大を防ぎ、機能性は低下しても全体を止めることなく残りの部分で運転を継続するという考え方です。

【フェイルソフト】
問題の個所を停止させたり、切り離したり、他の個所へ被害が拡大しにくい構造にするなどして、できるだけシステム全体を停止させずに性能・機能を落として稼働を継続(縮退運転)するような仕組みや考え方です。
例えば、複数のエンジンを積んだ航空機では、エンジンに火災が発生すると燃料の供給を断って延焼を防ぎ、残ったエンジンで、速度を落として飛行を継続できるような設計になっている。

ところがこのフェイルソフトで困難な状況を乗り越えると、その乗り越えた時の状態が常態化している組織があるのでは?
と考えるときがあります。
フェイルソフトはあくまでも異常時の応急措置的な対応を考えているのですが、厳しい経営環境での一時しのぎのつもりがいつの間にか常態として受け入れているようになっている---?!

以前省エネルギー活動が強く推奨されていたとき、濡れ雑巾を絞りに絞ったという極限を求めるというような風潮の時期があったと思うのですが、この時は関係者は我慢の連続であったと思います。
いつの間にか落ち着いた状況になっているように感じるのですが、そのときの経営下降が常態化している組織もあるのではと思うのですが--。

また、一部が機能を失っても全体としての機能を保ち、正常に稼動させ続け得る「フォールトトレラント(fault tolerant)」な、或いは問題が起きた時になるべく安全な状態に移行する「フェイルセーフ(fail safe)」な工夫を耕築されてきた組織もあると思います。

あの省エネルギーの時期から10年以上の年月が経っていますが、今回の最低賃金のアップが、またして企業にどのように影響するのか?
危惧の面もあります。

そしてまたウクライナ戦争を機に、エネルギー危機、食糧危機などの新たな試練が起きています。
人手不足も潜在的にあります。

武蔵野の小山昇社長は下記のような名言を発せられていたことを思い出します(表現は正確な再現ではないと思います)
「時代は我が社の都合を待ってくれない」
「時代は我が社の都合を置いていく」

「フォーリング・アップ(再起)」の新たな課題(機会)が中小企業の経営に突きつけられているように感じます。