「“影響表” の作成について」<06>

災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び怪我をしないことへの努力傾注」は最優先事項ですが、事前対策においては「被災後の生活」についても検討をしておく必要があります。

各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等の遭遇に際して「如何に事業を継続していくのか?」という課題に、事業継続計画(BCP)という方策が示されています。

この指針に示されている内容は、「被災後の私たちの“生活”」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)

前号は、「地震」「風水害(台風・豪雨)」「火災」時における各種災害によりもたらされる「生活上の困難事象」について取り上げました。
今回は、それらの困難事象の「影響表」の作成(影響表への落とし込み)について考えてみたいと思います。

当ホームページ記事(下記)より一部を引用します。
<c.f.>『④インフラ&会社に与える影響表(例)』


検討の結果は、下記のような「インフラ&会社に与える影響表(例)」に整理します。

【地震・風水害・火災 のインフラ&会社に与える影響】

インフラへの影響 資源 地震(震度6強) 風水害 火災

ライフライン

電気、ガス、水道が止まる(電気、ガス、水道の順に復旧する) 強風で停電の発生(状況による) 停電の発生(近隣の火災からの影響もあり)

情報通信

携帯電話、インターネットの使用不可 停電による情報機器の使用不可 停電による情報機器の使用不可

道路

家屋倒壊・浸水等により使用不可 水没による道路使用不可 一時的な道路使用不可

鉄道・公共交通

通行停止 通行停止(状況による)  
会社への影響

会社関係者の死傷発生
従業員の3割程度しか業務に就けない状況の発生
一時的に業務に就けない状況の発生
職場が浸水し就業できない
職場の焼失
(就業できない--失業の発生)

情報

情報機器の破損
データの消失
浸水によるデータの消失 データの消失

倒壊危険、浸水
備品により職場が混乱
職場が水没or浸水 職場が焼失、水損の発生

資金面において困難性の発生 復旧費用の発生 復旧費用の発生

以上は、思いつくままの例示ですが、各企業の状況により、内容を検討していきます。
そして、各リスクが企業の中核事業の継続に与える影響について、リスクアセスメントを深めていくこととなります。

----------

BCPの検討を深めることは、地震・水害・火災等の大規模な災害だけでなく、近隣での火災、落雷による停電、経営者の突然の入院、取引先の倒産、PCシステムの故障等々 日常的なトラブルへの対応にもつながります。

それ以外にも、BCPの深化は、下記のような業務品質の向上へもつながります。

  • 日常的な連絡網の活用による、業務密度の向上
  • BCPでの協力を前提とした、他企業との連携の強化
  • 日常的なクラウドの活用等による、主要データのバックアップ強化
  • 災害を前提とした意識改革により、顧客へのサービス品質の向上
  • ---

ここに示された影響表は、生活においてもほぼそのまま適用できると思います。

「インフラへの影響」の項目については、「ライフライン」がその文字通り、生活の命綱となります。
9月初旬の台風15号による千葉県における広範囲の長期停電は、そのことを如実に示してくれました。
電気の供給がなければ生活が成り立たない環境ができあがっています。
送配電、とくに配電網の弱点が鮮明になり、「電気が一番早く復旧する」とは言えない状況が現出しました。
(広範囲に及ぶ災害では、復旧にたずさわる人が極端に不足することが考えられます。)

「会社への影響」は「生活への影響」として、そのまま適用できますが、特に“生活の場所”と“食糧の確保”、そして“相互協力”が生活の質のポイントといえそうです。
“情報”においても、家族等の連絡は欠かせません。
命を維持するために必然的な避難生活となり、今のような快適生活しか経験のない人には苛酷な状況となることが考えられます。

この避難生活について、当筆への家族の評価は「できないだろう」です。
--できなくても生きていくためには、そのような状況も受け入れる心構えはありますが---
そのためにこうして検討しているのです--

以上のような状況を一つひとつ検討し、「災害発生時の行動」「避難時のルール」「家屋内の対策」「備蓄品の備え」等々の準備をすすめていくことになります。
そのための整理となるのがこの影響表です。
形式は自由ですが、この表を参考に検討を深められることを期待します。
上記引用ページにも書いてありますように、副次効果(生活品質の向上)についての「気づき」が起きるかもしれません。