久しぶりに加藤仁さんの「社長の椅子が泣いている」という本を読み返してみました。
河島博さんという有能で誠実な経営者を主人公とした物語です。
河島博氏の兄は、本田宗一郎の後を継いだホンダ社長の河島喜好氏です。
河島博氏は、その実力と実績で日本楽器製造(ヤマハ)社長になります。
社長に上り詰めるまでのサラリーマンとしての河島博氏の活躍が描かれています。
そして、社長としても優秀な業績を残しますが、取締役会で突然の解任を受けます。
院政をひく川上源一氏が息子の○○を社長にするための画策が描かれています。
耐え難い環境に置かれても最善を尽くす河島氏。そして解任。
このくだりは、涙して読みました。
解雇後、河島氏は沈黙を通しました。
それから2年後、中内功氏の三顧の礼でダイエーに副社長として迎えられます。
そしてこのダイエーでの数年、業績をV字回復させます。
ところがここでも、中内氏の子息を後継者に据えるということで、中内氏が事業家管財人をしていたリッカー(ミシンメーカー)へ管財人代理として送り込まれます。
ただ、中内氏は人情の人で、河島氏を無碍には扱わなかったのですが、河島氏が離れた後のダイエーはまた昔の経営体質に戻ってしまいます。
次のリッカーでも業績を上げ、従業員に希望を抱かせ、社長を退きます。
しかし、その後、リッカーもダイエー傘下の会社に吸収され消滅の憂き目にあいます。
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河島氏が去った後の日本楽器(ヤマハ)は長く低迷が続きました。
つま恋の爆発事故も発生しました。
そして、川上親子は日本楽器(ヤマハ)を追放されることになります。
また、その後のダイエーはご存じのようになりました。
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この物語を貫くものは
優秀なサラリーマン経営者とオーナー社長(川上氏はオーナーではなかったのですが、親から受け継いだ権力を当時は持っていました)、“有能な誠実さ”と“人間の泥臭さ(エゴ)”、“純粋性”と“通俗性”のような構図になっています。
そして、河島博氏を貫いている誠実さと信念(この人の品性)には深く惹かれます。
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最後に兄喜好氏との語らいでこの物語は終わっています。
子供のとき、教会に通っていたときの思い出。
そして、河島博氏が念頭に置いた「ビジネスの神様」
そこに存在している道徳性。
納得の読み応えある本でした。
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河島氏氏も著者の加藤氏ももうこの世に居ないのが寂しいです。