静電気の放電には下記のような種類があるといわれています。
①コロナ放電
数kV以上に帯電した尖った部分(針やワイヤの先端部分)で、電界強度が局部的に絶縁破壊電界強度に達したときに起こる微弱な部分放電。
⼀般に可燃性物質の着⽕源とはなりにくい(⽔素ガスのような最⼩着⽕エネルギーが特に⼩さい物質を除く)
②ブラシ放電
コロナ放電が進展し、ブラシ状の発光を伴うもの。
等価放電エネルギーは最⼤で4mJ程度とされており、可燃性ガス・蒸気の着⽕源になり得る。
非常に着⽕しやすい浮遊粉じんの着⽕源となる可能性もある。
帯電したプラスチック関連製品(配管、シート、袋、粉体など)や、電気抵抗の大きな液体(灯油、軽油など)の表面から発生する。
③雷状放電
粉体投⼊、タンク洗浄などで、帯電した粉じんやミストが空間に浮遊し、空間電荷を形成する。
この空間電荷の規模が⼤きく、かつ空間電荷密度が⼤きいと、空間電荷雲から付近の突起物に向かって雷のように放電が起こることがある。
この放電エネルギーは⼤きく、可燃性ガス・蒸気だけでなく、可燃性粉体の着⽕源ともなり得る。
④沿⾯放電
グラスライニングのようにシート状の導体が背⾯に密着するなどして、表⾯電荷密度が著しく⼤きくなると、グラスライニングの絶縁破壊などに伴って、表⾯に沿って沿⾯放電が発⽣する。
この放電エネルギー(数10mJ)は⼤きく、可燃性ガス・蒸気だけでなく、可燃性粉体の着⽕源ともなりうる。
沿面放電の発生時には強い発光と、大きな破裂音が伴う。
⑤⽕花放電
⼀般的に数kVに帯電した導体に、接地導体が数mmまで接近したときに発⽣する。
帯電物に蓄積された静電エネルギーのほぼすべてが放電されるため、着⽕能⼒が⾼く、可燃性ガス・蒸気だけでなく、可燃性粉体の着⽕源ともなり得る。
特に危険な放電であり、静電気による火災の7割は火花放電を原因としているといわれている。
⑥コーン放電
強く帯電した粉体を金属製容器内に充填するとき、堆積面の中心付近から容器の壁面に向かって線状の放電が発生することがある。
各種可燃物に対して着火源となることが知られている。
From雑誌「安全と健康」2021(独)労働者健康安全機構 主任研究員遠藤雄大氏記事