−−雑誌「安全と健康2000年7⽉」平成11年3⽉31⽇神⼾地裁姫路⽀部判決:コメントより−−
「使⽤者はどこまで安全衛⽣教育または指導を⾏えば安全配慮義務を尽くしたことになるのか」が問われた事例です。
<使⽤者は、下記のような安全措置を講じていると主張>
- ⼊社時のマニュアル教育をしていること
- 業務読本等を配布していること
- 業務に関するビデオを控え室に置いていること
- 労働契約書には遵守事項を記載し、労働者が署名、押印していること
(遵守事項の中に問題となっている労働災害についての注意事項も⼊っている) - その他に「健康で楽しく働くためのお約束事項」と題する書⾯を交付し、労働者もそれに署名、押印していること
(その約束事の中に、被災原因となった⾏為の禁⽌を掲げている)
会社は、⼀応の安全管理措置を講じているように思われます。
しかしながら現実の業務においては、会社側の周知徹底にもかかわらず、今回の災害となったような違反⾏為が多々あったと認められ、会社の管理者がそれを十分認識していなかったこと、そしてそのような違反⾏為について注意、指導をしていなかったことが認められた。
判決は、以下のように会社の安全配慮義務違反を認めた。
「雇⽤契約上の安全配慮義務に怠りがないと認めるためには、抽象的に危険を告知し、⼀般的に安全対策を指導するだけでは⾜りず、具体的状況において、従業員が安全を損なうような⾏為に出た場合あるいはそのおそれのある場合には、適宜安全のための指導をする必要があることは雇⽤契約に付随する義務であり、前記認定の事実により、会社側は⼗分な安全対策の指導を怠ったといわなければならず、安全配慮義務違反の債務不履⾏があったと認められる。」
作業者が、⼿間ひまを省略するためにマニュアルどおりやらないことが常態化し、現場の責任者もそれを黙認または少なくともうるさく注意しないことは⼀般にあり得ることです。
それでは安全配慮義務を尽くしたことにはならないということです。
教育、指導は末端の作業者まで徹底されなければ安全配慮義務違反となることを認識すべきです。
<過失相殺>
この判決では、作業者⾃⾝も危険性を⼗分認識していたはずであり、その危険を敢えて冒した本⼈にも責任があるとして、過失相殺が認められています。