ドリル① ボール盤で穴開け中、巻き込まれる災害事例

<災害事例(業界関係書籍より)>

機械室内に修理用として設置していたボール盤で、10cm足らずの鋼板に穴を開けていて、鋼板を保持していた左手の軍手がドリルに巻き込まれ、親指と人差し指を負傷したという事例です。
このケースでは幸いにも両指とも縫合手術は成功したとのことですが、3ヵ月経っても指は十分に曲がらず、しびれも残っているそうです。
指の切断という事態もあり得たわけです。

加工材が小さく、指で押さえていた力に抗して、ドリルと一緒に回転し、そのとき軍手を着用していたため、軍手がドリルに巻き込まれたということです。

企業の責任者は、災害原因として次のような項目を挙げています。

  1. 手袋を着用して穴開け作業を行っていた。
  2. 加工材を手で押さえて作業した。
  3. ドリルの切れ味がよくなかった。
  4. 保護眼鏡をしていなかった。
  5. ボール盤の周辺が乱雑で、薄暗かった。

再発防止策としては、上記原因項目への対応ともなりますが、一般的に次のような事項が示されています。

<ボール盤作業における注意事項>
  • 「作業中の手袋使用禁止」の徹底
  • ボール盤作業時、目につく箇所に「手袋使用禁止」の注意標示の掲示
  • 加工材は手で押さえず、“固定治具”に固定して作業する
    --“固定治具”の備え付け
  • 切削屑の除去は、“かき棒”を使用する
    --“かき棒”の備え付け
  • 回転部分にセットボルト等の突出部を残さないこと。
  • 研磨の完了している交換用ドリルの備え付け
<ボール盤の設備的対策>
  • ドリルの切削点以外の回転部を覆うカバーの設置
<作業環境対策>
  • 作業周辺部の整理・整頓・清掃の徹底
  • 作業箇所の照度の確保

「ドリル作業では手袋の使用禁止」という典型的な災害事例です。
修理作業の時などは、周りの急がせ感もあり、安全手順厳守まで気がまわらないという状況にもなりがちです。
そのような中でも「一呼吸置く余裕」が必要なのですが、経験の浅い人には、なかなか難しい面もあると思います。
それができるかどうか?
その職場の「安全特性(教育の実効成果)(管理方針)(安全文化)」に負うところとなります。