⑨“設備の経年化”への対策好事例<3>

前号に続いての厚生労働省の「設備の経年化による労働災害リスクと防止対策」についてですが、「高経年設備における設備保全の良好事例」「残留リスクへの取組み良好事例」が示されています。
建築・設備環境管理においても活用或いは再チェックの内容にもなると考えます。

【高経年設備における設備保全の良好事例】
経年設備対策の例具体的内容
高経年化設備の点検強化長期保全計画(設備の点検方法、点検頻度など)の作成と点検結果に応じた点検頻度を増加・減少
経年劣化が確認されれば点検頻度を増加、必要に応じて更新時期を早める(設備の種類ごとに点検頻度を設定する)
設備の経年数を考慮した設備の重要度ランク付け設備が停止した場合の影響度評価に、設備の使用年数も加える。
生産、品質、コスト、安全・環境への影響度と同様に設備の重要度を定め、重要度に合致した保全方法と保全計画を作成する。
定期的な設備更新設備保全ロードマップ(長期保全カレンダー)を作成し、計画的に設備を更新または部分更新する。
定期的な部品交換保全カレンダーに沿って定期的に部品交換する
例1)主要部品は1年ごとに交換
例2)高経年設備の部品供給期間の情報に応じて部品を確保
日常の設備保全点検結果、修理履歴、トラブル実績を勘案して、日常保全、定期保全計画を作成し、設備を健全な状態に維持する。
設備不具合の早期発見と対応平常運転中に気が付いた気がかりなことを、設備不調報告書に操業課が記載し、設備保全課が検査し、必要に応じて修理を行う。
(設備劣化、機械不調による災害を防止する)
パトロール、ヒヤリ・ハットの情報を設備の不具合発見に活かしている。

※上記は具体的事項の一部を示してくれていますが、“リスクの大きさによる重点管理”が、年間計画或いは月間計画に反映されて行われていると思われます。

【残留リスクへの取組み良好事例】

事業者は厚生労働省のリスクアセスメント指針に従って、リスクアセスメントを行ない、リスクレベルが高い場合は、リスク低減対策を実施し、リスクレベルを許容範囲内に抑えなければなりません。
しかし、技術的に対策が困難、代替策または応急的対策を実施したがリスクが残っている、対策実施までに時間がかかるなどの理由で、リスクレベルが許容範囲内に入らない場合があります。
この時に、残量リスクの存在を把握し、周知し、災害防止のための措置をとることが重要です。
残留リスク管理の良好な事例を紹介します。
一定レベル以上の残留リスクがある場合は、立入制限など応急的な防護措置を取り、残留リスクの内容、災害防止のための注意事項、今後のリスク低減対策の実施計画等を周知徹底して災害の防止に努めています。
また、現場に残留リスクがあることを注意喚起する標示をしています。

①技術的にリスク低減対策が困難な場合
その設備での作業を特別管理作業に指定し、作業は作業手順を熟知した作業員に限定して許可しています。
②すぐに対策が実施できない設備の災害防止の取組み
残留リスク対策実施計画一覧表に登録して、定期的に対策実施状況を確認し、対策完了までフォローしています。

※設備管理においては、残留リスクの把握と、それへの対応がリスクアセスメントにおける展開の主要なパターンになると思われます。
また残留リスクへの対応のため、施設に必要な法定資格者の配置が定められており、加えて組織としての経営面でのバックアップが必要となります。

以上において、設備主任或いは統括管理者は、その中心的存在としての役割を果たすことになると思います。

<参考>設備経年劣化による災害リスクとその防止