9月のはじめごろ「JR北海道の運転手が自分のミスを隠すため、列車のATSスイッチをハンマーでたたき壊した」というニュースがありました。
乗客の安全をハード面でバックアップするための自動列車停止装置を、乗客の安全を守るべき運転手が破壊するという行為にある種のショックを受けました。
そして同時に、「JR福知山線脱線事故」を考えました。
運転手が遅れを取り戻すため、スピードを上げすぎてカーブに進入し脱線したのが直接の原因であり、後になって会社側の運営体制に本質的な原因があったことが明らかになってきたという事故であったと記憶しています。
このJR北海道の事件においても、運転手の後先を考えない短絡的な行動は当然に避難されるべきですが、運転手にこういう行動をとらせた管理側の問題はなかったのかと考えます。
ところで、この運転手がしたミスとは?
新聞報道(毎日新聞 9月16日 22時10分配信)によると、
- 始発駅の札幌駅へ向けて運転所を出発したが、エンジンのあるディーゼル機関車(2両)のATSが作動し構内で停止。
運転士がその場で確認したところ、本来は“切”にしておくべき2両目後部のスイッチが“入”のままだったため、手動で“切”にした。 - 運転士は駆けつけた整備士にこの事実を伝えず、同社は「原因不明」として列車を車庫へ戻し、機関車の前後を入れ替えて1時間14分遅れで再び車庫を出た。
- 同社は「遅れの直接的な原因ではなく、列車の運行にも支障を及ぼさない事案」として事実を公表していなかったが、運転士を処分する方針。
ヒューマンエラーの本によると、このようなエラーを「オミッションエラー(すべきことをしない)」というのだそうですが、エラーのタイプとして7つ挙げられています。
(From「保守事故」ジェームズ・リーズン、アラン・ホッブス)
- 認知の失敗
- 記憶のラプス(短期的な記憶の喪失)
- 行為のスリップ(目的は正しいが、行為段階での失敗)
- 習慣のエラー
- 誤った仮定(ミステイク)
- ナレッジベースのエラー(ミステイク)
- 違反
この事故においては、スイッチの操作ミスは「記憶のラプス」、“整備士に事実を伝えなかったこと”と“事実を公表しなかったこと”は「ミステイク」に該当すると考えられます。
ミステイクには「誤った判断」が介在しており、“管理面での問題点”が潜んでいるのではとも考えられます。
エラーを犯罪にまで走らせたモノは?
素直に白状することが難しいモノは?
その後、北海道七飯町で起きたJR函館線の貨物列車脱線事故。
その原因は、線路幅の異常が放置されていたこと。
そして、線路異常が数十箇所も放置されていたことが発覚!
ジェームズ・リーズン氏はその著「組織事故」の中で多くの要因を鋭く分析し指摘されています。