田中陽希氏の“危険の予知と準備”

NHKグレートトラバース「日本百名山一筆書き」
深田久弥氏の随筆「日本百名山」で定められた100座を人力のみで繋ぐ。
未だ陸上と海上の両方を人力のみで繋ぎ合わせた記録はなく、前人未達の挑戦。
4月1日スタート10月26日無事達成!7800kmを踏破!

田中陽希氏の「“山”“道”“海”の自然の難関と向き合い、自分と向き合う挑戦」に一応援者として興味深く(のめり込んで)見させていただきました。
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記録達成後の特集番組で田中氏の興味深い発言を聞きました。

「怖さを克服するのにどうやって?」という質問に次のような応え

  • 間違えば、イコール死につながる!
  • 登る前からイメージし、そのリスクに対して準備をする!
  • しっかり準備することが、怪我をしないとか事故にならなかったとかの結果に結びつく!

番組ディレクター曰く

  • 良い意味で臆病!
  • 危険になる前に判断できる!
    それにより準備ができる!
  • そして、いろいろの危機回避のノウハウ!

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田中氏のネット記事があります

出発前に、『山と高原地図』にプロジェクトのスタートからゴールまでのルートを記入していきました。
このルートの記入と検討作業だけでも、3ヶ月を要し、さらに山と山の間の道程も、歩きやすいルートをGoogleMap等で確認していきましたので、準備には最終的に半年近くをかけました。

こうしたルートプランニングでは、200日近いプロジェクト、その一日一日の道のりをゴールから逆算してリアルにイメージするので、それだけで大分疲労しましたね(笑)
ただ人力での踏破については誰も挑戦したことがないプロジェクトでしたので、どういう道順で百名山をひと筆書きするか、ルート決めが非常に重要だったんです。
例えば、日本アルプスは南下するルートの方が一見進みやすいように思えるんですが、残雪や山小屋の状況等を考慮して、北上するルートを選びました。
このように、スタートからゴールまでの道のりをおおまかにでも把握しておけば、各々の山をどの登山口で、どのコースで登っていけばよいかを判断できますし、イレギュラーなコースや日程の変更にも柔軟に対応できます。

自然の中では、人間はとても弱いです。
街中では近くの病院に行けばすぐに回復するようなケガが、登山では命取りになることが多々あります。
プロジェクト中、自分には“リスク”がかかっているという緊張感は常に持つようにしていました。
そして、無用なリスクは避けるために、入念な準備が必要だったんです。


準備は冒険家としては、当たり前のことでしょうが、表には見えない努力を改めて認識しました。
業務においても、目に見えない心配事(危険)に対しての準備が大切です。
リスクアセスメントにおいても、日々の業務のなかでの“ヒヤリ・ハット”とか“災害事例”等により、“業務に潜在する危険性又は有害性を洗い出す作業”が最初のポイントとなります。
これは、「不安に思うこと」や「心配事」を明確にするということです。経営や管理の立場にある人は常にやっておられることです。
“危惧されること”を具体的な表現で表すのです。
「~なので、~して、~になる」と具体的な場面を言葉で表現してみます。
漠とした心配事や不安を明確な事象として表現し、その生起のパターンをいろいろと考えてみることです。
これは多くの場合経験を積むことにより深められるものであり、ベテランのベテランたる所以にもなるのですが、努力によりそれに近づくこともできます。

この「危険性又は有害性の洗い出し」はリスクアセスメントの出発点となる活動です。
そしてその検討の深さが、次の準備作業での充実に繫がっていくのだと考えます。