あるベテラン安全担当者の回顧談です。
労働災害が発生するたびに現場へ出向き、毎回以前と同じ要因と対策に行き着き、「なぜ反省が活かされないのか?」という疑問から、「この事後処理体質から脱却しなければ!」と強く思うようになったそうです。
事後対応から事前対応(未然防止)へ切り替えるには?
まず、過去20年間の自社で発生した災害を分析しました。
そして、重大な結果につながる要素を持つ災害のタイプ選び出し「重点災害」と名づけたそうです。
そして各作業場で、その選び出したタイプに該当する危険作業を洗い出し、一つひとつ改善策を練っていったそうです。
重点作業に絞って、安全対策を深掘りしていったということです。
その結果はどうであったか?
3年経過した時(想定より早く)、良い結果がでたそうです。
活動前5年間の平均に比べ、全災害が約半分近く減少したのです。
それも、重点災害の減少率より、ターゲットとしなかった他の災害も大きく減少したそうです。
そのベテラン安全担当者は下記のように述懐されます。
・活動を始めた頃、「重点災害」は全災害の約30%程度であり、「他の災害を軽視している」との批判もでたが、「アレモコレモできないし、一つのことがきちっとできないで他のこともできない」との信念を持って対応した。
・ただ、重点災害の比率は大きく変わらなかった!。
・重点災害を徹底したことで、一人ひとりの感性が上がった結果と考えている。
小さな災害やヒヤリでも「ひょっとしたら死ぬかもしれない」という重点災害をターゲットとしたことで、みんな真剣に取り組むようになった。
・トップから第一線までベクトルが揃い、安全を小集団活動のテーマにできたことも大きかった。
この安全担者の会社は、大手企業です。
そして、数十年前は労働災害の発生も多い時期でした。
多くの災害事例を元に、上記のような興味深い活動成果を導き出されています。
・アレモコレモやるべきことがある時、どのように対応すべきなのか?
管理的立場にある人は部下に「アレモコレモ実施せよ」と指示したくなると思いますが---
・全体が半減しても、個々の災害構成の比率は大きく変わらなかった!
仕事の内容が同じであれば、全体の中のある部分だけが極端に少なくなることはない。
「全体が良くなればよい」ということ。
これは私たちの周りの社会にも当てはまるような意味も持っているようにも思いますが---
・トップから第一線まで深くベクトルがそろう。
これは“難事”ですか、言わずもがなということでしょうか---