今まで、経済アナリスト藤原直哉氏の企業文化論について記してきました。
どのような企業文化の組織に身を置くかということは、そこで働く人の人生に大きく影響します。
そして、その企業文化において決定的に大事な要素は「リーダーシップ」です。
藤原先生は、「建設的な文化をつくるために具体的にどうすればいいのか?」について、「建設的文化をつくるサイエンス」として、この“リーダーシップ論”についても言及されています
前号では、「“リーダーシップの技術体系”9項目」のうち、「③コーチおよび教育訓練技術」を記しました。
今回は「④動機づけ技術」について、藤原先生の示唆を挙げたいと思います。
「動機づけ技術」は、メンバーが「一つの目標を達成するために喜んで努力する」ようにやる気を醸成することを目的とする。
そのためリーダーは、メンバー個人の興味やチーム全体のやるべきこと、そして必要なことを上手に調整して、皆がやる気を持って仕事ができるように仕事の内容を整理し、メンバーの動機の水準を高くしなければならない。
・チームとメンバーと一緒に彼等の役割と責任を明確にする。
・仕事が達成できたらそれを認め、評価することを遅滞なく行う。
・メンバー一人ひとりが個性を持った個人であると認め、公平かつ整合的に接する。
・個人の業績とともにチームの業績を認め、それに対して報奨を与える。
動機づけについては、いろいろな経営者が、それぞれの特色を出して運営されています。
要約すると藤原先生が挙げられているような項目になると考えられます。
しかし、現実として
動機づけをしようとしても、なかなか社員がその意図をわかってくれない。
話をしても、下ばかり向いていてこちらを真正面から見てくれない。
そのいため、短い時間でも強制的に教育の機会を作っているが、長続きしない!
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筆者の経験からもそのようなシーンが浮かんできます。
ダイヤ精機の社長の諏訪貴子さんも、急逝されたお父さんの後を受けて、主婦から2代目社長になった当初の苦労を「町工場の娘」に記されています。
- まず「挨拶」「5S(最初は2S)」で意識改革をスタート
--不要な物を4トントラックで運び出す(捨てる)。
不要品がなくなると作業効率がよくなることを社員が実感!(社長のいうことを聞いてみるかという気持ちが芽生える) - 社員研修は社長が資料も揃えて実施した。
--ホウレンソウ、品質・コスト管理、PDCAの考え方等々 - QCサークルの設置
--若い人も発言しやすいように
若いグループには、会社と社長を相手にしての悪口等自由な意見を言ってもよいと伝える。
そうするとさまざまな問題が浮かび上がってきた。
指摘を受けた問題点には、どんな小さなことでも対応した。 - 社員とのコミュニケーションを良くするために
社長が作業服を着て工場に入り、社員と一緒に時間を過ごすことを心がけた。
--諏訪さんは、工学部の卒業で、最初に就職した会社で現場経験をしている。
社員との壁を縮めるために一計を講じて、「大阪弁」を使った。
--諏訪さんは東京生まれの,東京育ち
中小企業においては、経営者自らが教育の任に当たるくらいの本音の本気度を示すことが必要になります。
しかし、たとえそのように努力したとしても、社員の方がこちらを向いてくれるようになるには時間がかかります。
そして、その努力の程度によっては、ある機会に流れが変わることがあると言われます。
それまで経営者は我慢できるかどうかです。
経営者の本気度と情熱と忍耐が「動機づけ」ベースのように考えられます。