「FCP:避難場所への避難について」<16>

災害等において、「(自分も含めて)関係する人たちの命が救われること、及び負傷しないこと」は最優先ですが、事前対策として「被災後の生活」についても検討しておく必要があります。

各事業場においては、災害時のリスクマネジメントとして、中小企業庁から「中⼩企業BCP策定運⽤指針」が示されています。
そこには、災害等に遭遇して「事業を如何に継続していくのか?」という課題に対して、事業継続計画(BCP)の作成という方策が示されています。

この指針に示されている内容は、「災害への対応」「被災後の私たちの生活」を検討するうえにおいても参考となる事項が多くあります。
そこで、“生活の継続”という視点で、この指針の内容を検討してみるのも意味のあることと考えます。
(いわば「FCP:Family Continuity Plan」への“試考”といえます)

前号は、「事前対策」における「建物内の避難」についてでした。
今回は「避難場所への避難」について考えてみたいと思います。


危険が迫ったときは、安全な場所への避難が原則ですが、
引用させていただいている「イツモノート」に、避難時について
 「街の風景が変わってしまう」
 「脱出するにも体力が必要」

と記されています。
緊急・緊張下での行動となりますが
いつも見ている風景とは違った(変貌した)周りの風景を見ながら、
自分の体力の限界を気にしての避難ということになります。

事前に避難場所を把握しておくことで、早く行動に移ることができます。

市町村では、災害種別ごとに避難所を指定しているので、災害の種類に応じて避難する避難場所を事前に検討しておく必要があります。

現在は「自宅(在宅)避難」という選択肢も挙げられています。
もし、自宅の建物が無事で、周囲の安全も確認できるのであれば、自宅での避難という選択肢もあります。
自宅を避難場所(或いは避難所)にすることができるのなら、ストレスは減るのではないかと思います。
ただし、自宅避難を選択肢に入れるのなら、そのための準備が必要となります。
インフラ(特に水道)が止まった状態、余震の継続、浸水の引きが遅い等の状況も考慮しておく必要があります。
自宅と避難所の使い分けもあり得るかもしれません。

※大地震時の自宅の耐久性については、被災震度に応じた使用の可否について、事前に目途を立てておくことも必要です。

避難経路を歩いてみよう

避難場所が確認できたら、事前に避難経路を一度、歩いてみましょう。
避難は徒歩が原則です。
いつもは何気なく通っている道も、道沿いに自動販売機、電信柱、ブロック塀等が、避難時の視点では違って見えてくるかもしれません。
地震により、これらが障害物となって 倒れてきたり、道をふさいでるかもしれません。
また、高齢者の方・車椅子の方の移動には、障害となる段差などがあるかもしれません。
これらへの対応を事前に検討することができます。
そして、もしもに備えて、避難経路を複数考えておくことも必要になるかもしれません。

外出先等での避難ということも考えておく必要があります

外出先で地震が起きたら、どこへ避難したらよいか?
近くの避難場所を目指すことになると思いますが--

スマホが使えたら、避難場所を早く見つけることができるかもしれません。
もし見つからないようなら、周囲の人に聞く、地元の人に従う等により、一時身を寄せられる場所へ向かうということになると思います。

避難場所(指定緊急避難場所)
さし迫っている災害から身を守るために、緊急時に避難する場所。
「広域避難場所」「一時避難場所」「津波避難ビル・水害時避難ビル」などがあり、誰でも行くことができる。
公園、学校、堅牢な建築物などが指定されている。

避難所(指定避難所)
災害の危険を避けて、住民が一定期間滞在し、生活環境を調整するための施設。
小中学校の体育館、公民館などが多く、地域防災拠点となり支援物資などが集まる仕組みができている。
基本的には、その地域の住民が利用することとなる。

「安全な場所へ避難してください」
「自分の命を守る行動をとってください」
という避難を促す放送が繰り返されます。
(自分の命は自分で守るしかない状況となります)

それには事前の検討・準備が大きな意味を持ってきます

今年は、新型コロナウイルスへの対応として「避難場所での“密”」の問題が挙げられています。
そして、今年も危惧していた梅雨前線による豪雨災害が発生しました。
(ここ数年、毎年発生しています)
九州全域にわたって線状降水帯が発生し、河川の氾濫による水没災害が発生しました。
そして数日後には、岐阜・長野にも発生しました。
日本中が侵食されている状況です。
今後、どこで発生するか不安です。
発生場所の予測についても、待ったなしの状態です。
避難についても、自分の周囲の状況変化を予知することが難しくなってきている状況だと思います。
シトシトと降る梅雨の情景はもう少ないかもしれません

そして、次は猛暑の心配です。
当筆の小学生時、夏休み温度記録の最高値は32℃(それも1日程度)であったことを思い出します。


レジリエンス『先ずは生き延びることへの柔軟対応』

★『釜石の軌跡 三原則』
 --鵜住居小学校の避難例
①想定にとらわれるな
②最善を尽くせ
③率先し、避難せよ


★『想定外に備える』
 --南三陸町立戸倉小学校元校長 麻生川敦氏講演より
  (東日本大震災時、子供たちの避難指揮をとった震災当時の校長)
①想定外が起こり得る覚悟をもつ。
②想定外の判断を行う目を持つ。
③臨機応変に対応する力を上げる。

(この拙いブログは、まだ災害について十分な実感を持てない筆者自身への「災害意識の駆り立て」でもあり、また「なかなか災害行動へと結びつかない焦り」でもありますが、何か皆様のFCPを考えるうえでのきっかけともなれば幸いに存じます。)