非常用の照明装置

火災などの発生時、短絡および地絡などの電気的要因で停電を伴うことが多いため、最低限の避難行動を確保する予備電源による床面照度の1ルクス確保、火災時の熱気流に対する環境を考慮した耐熱性、瞬時点灯性および30分間以上の持続容量の性能を有する非常用の照明装置を、特殊建築物及び一定規模以上の建築物に設置することが義務付けられている。

1972年に発生しデパート(既存不適格建築物)火災では、避難行動を開始した直後、建築物の保安担当者が慌てて建築物全体の電源を遮断したため、暗闇の避難行動中、猛煙が噴き上げてきてパニック状態となり、多くの死傷者(死者118名)を出した。
この事例は、非常用の照明装置の設置の必要性を物語るものであった 。

蓄電池内蔵方式による非常用の照明装置の問題点

電池内蔵方式の非常用の照明装置は、照明器具の内部に予備電源として電池を内蔵しているもので、建築物の部分停電に対応でき防災上有効である。
しかし、内臓電池の寿命が短い(5年程度)ため、取り替え経費の関係で持続容量の確保に問題が生じる可能性がある。
したがって、その機能を損なうことがないように維持保全する必要がある。

電源別置方式による非常用の照明装置の問題点

電源別置方式による非常用の照明装置は、予備電源を照明器具以外の部分に一括して設置するものである。
このため、電源の停電検出位置に問題を生じている。
部分停電対応の階別ブロック点灯が推奨されているが、既存建築物では、建築全体の停電により非常用照明器具が点灯する一括点灯方式が存在している。
火災時の停電が必ずしも建築全体となるとは限らない。
したがって、予備電源を作動させる停電検出位置などのシステム構成に当たっては、防災上の配慮をする必要がある。

From「建築設備士更新講習テキスト2000年版」