避難生活について③留意事項2

避難所生活について具体的に深めていくことは、体験がない限り限界を感じます。
特に今回話題にする「ライフラインの復旧」「トイレの使用」は、困難性のある重要な問題点です。
一般記事化されている事項を前回に続きピックアップしてみます。
(以前記事の再掲になるかもしれませんが、再度考えてみたいと思います)

ライフラインの復旧について

2021年8月3日和歌山市において、水道用の橋が崩落し、およそ6万戸で断水が発生し、復旧まで約1週間を要したという事故がありました。
現在では考えられないと思うような事故でしたが、至るところにこのような設備の老朽化・弱体化が潜んでいるのでは?という危惧の思いが浮かんできました。
災害時にはこのような事故が、連鎖的に或いは多重的に発生することが考えられます。
そして水道や電気、ガスの供給が止まるという事態が起こります。
また、道路が壊れたり、倒壊した家屋で通れなくなったりします。
(通路が限られてきます)
電気が止まると、テレビ、パソコンでの情報収集ができなくなります。
生活が完全にマヒしてしまいます。

以前の当ホームページでも記しましたが、ライフラインの復旧について下記の例が示されています。
(この日数も地域により大きく変わると考えられます)

ライフライン復旧

和歌山の断水においては、水道仮設工事を急ぎ、約1週間で供給は回復しましたが、それは多くの社会資源を結集して投入できた結果の1週間です。
(送水後も、飲用を確認するための水質検査に数日を要したようです。)
社会全体がマヒしていれば、と考えると、上記表の復旧日数も楽観的な数値になるかもしれません。
しかし、避難生活者としてはその回復を切望する立場です。
つまり、備蓄での生活をいつまで続けられるかという問題です。
供給が遅れれば、生命の危機にもつながる状況となります。

避難生活におけるトイレの問題について

トイレに関する問題は深刻です。
たとえ自宅避難が出来たとしても、トイレが使えるとは限りません。
震度6弱以上の地震の後は、原則トイレは使用禁止といわれています。
(断水による水の使用不可も発生します。)
状況によっては、下水道管や排水管の機能確認まで待つ必要が生じます。
また施設の設置状況にもよりますが、風呂の残り水などをムリに使うと、汚水の逆流も考えられます。

以上のような理由により、非常用トイレの準備の必要性が言われます。
<非常用トイレについては夏季のようなポイントが示されています>
・消臭剤・凝固剤と、まとめて密閉できる消臭袋を用意しておくこと。
・排泄物(大便・小便)は結構かさばるので、衛生面も考慮のうえ、その保管場所を事前に決めておくこと。
※非常用トイレを実際に使ってみないと実感が湧きませんが、難題であることは容易に想像できます。

数ヵ月前の当ブログでも掲載しました「非常用トイレの例」を再掲載します

簡易トイレ

また、参考とさせていただいている「イツモノート」(ポプラ文庫)にも、トイレに関する当事者の深刻な声が出ています。

以上、避難生活における課題をピックアップしてみました。
滅入るような言葉もありましたが、そのような現実の中、関係する人達が知恵と工夫を出し合って、生き延びることを考えていかなければなりません。
引用させていただいている「イツモノート」の体験者の声には、困難下での「人の優しさに触れ元気づけられた」というような内容も多くあります。

<参考>
『防災訓練がなぜ必要か』について、雑誌「安全と健康」2021/6に東北大学教授邑本俊亮氏が、心理学の立場から下記の3点にまとめられています。
◆第一に、
訓練に参加することで、参加した人の防災に対する意識が向上する。
防災意識が向上すれば、防災に関する情報に注意が向きやすくなるし、次回の防災訓練に参加する確率も上がる。
◆第二に、
現場の訓練で身に付けた知識は、将来その場で被災した際に思い出しやすい。
場所が思い出すための手がかりになるからである。
これは文脈依存記憶と呼ばれている。
◆第三に、
実際に体を動かすことで、体が覚えている知識となる。
心理学では人間の知識を「宣言的知識」と「手続き的知識」に分けて考えることが一般的である。
前者は言葉で言える知識のことであり、後者は体が覚えている知識のことである。
いくら避難の仕方を言葉で言えても、体がスムーズに動かなければ意味がない。
体が覚えている知識にするためには、体を動かして何度も訓練しておくことが必要なのである。